13


「………」

うっすらと浮上する意識に従い目を覚ましてみれば広がった光景に首を捻った。ぼんやりと明かりの点った部屋に俺が寝ている布団、横にはミカサが寝ていて久し振りに見る寝顔に小さく笑みがこぼれた。そういえば、ロードは?
上半身だけ起こしてみれば探し人はすぐに見つかって。俺達とは違うコートを羽織り壁に背を預けて寝息を立てていた。借りていたコートを返えそうとゆっくりとした動作で布団から抜け出しロードに近付く。微かに垣間見えるその表情は酷く穏やかで普段のロードからは考えられないと一人で驚いていた時だった

「……体調は?」

「うっぇ!!!…あ、いや」

「だから、体調は?」

「え、と。もう大丈夫」

――大丈夫なわけねェんだよ。
俺の気配でゆっくりと瞼を持ち上げ、ガシガシと頭を掻きながら覚束ない足取りで立ち上がったロードは袋の中をごそごそと漁ると、なにかを取り出して戻ってきた。手にあるのは水と…薬。
しかしながら彼の言葉とは裏腹に俺の身体は先程より楽になっていたのは確かで。ぼんやりとした思考もまともに動き、痛みを訴えていた喉も腫れがひき、気分も悪くなかった

「これを飲んでもう一度寝てろ。そうすれば明日には動けるくらい回復してるだろ 」

「ん、」

差し出された薬を口に含み水で流し込む。流石いつも医学書を読んでいるだけのことはあるなぁ、ロードが居なかったら俺は今ごろどうなってたんだか。最悪の結果が頭を過りもう大丈夫だとその思考を掻き消した

「熱は…、多少はよくなったか」

思い出したように幾分ひんやりしたロードの掌が額に触れれば少し心地いい。離れてほしくなくて、ついすりよってしまった

「こ、これは。…その」

「………」

「つい、条件反射で……」

自分の行動が恥ずかしくて慌てて誤魔化そうとするもロードは聞いているのか聞いていないのか分からない。暫しの沈黙を越えたあとで僅かに眉を寄せたロードが静かに口を開いた

「もう寝ろ。明日はD地点を目指す」

「あぁ…」

「今出来る最善の治療は施した。後は身体を休めて明日に備えろ」

そう言って再び眠ろうとするロードにいつもなら感じることのない不安に駆られてしまう。ミカサもいる、ロードもいる。最も安全だと思われるメンバーの班に入ったんだ、心配する必要はないはずなのに熱のせいからかまともな思考を辿ることができない。今は誰かに触れていたい、隣にいると俺は一人じゃないことを教えてほしい
ロードの袖を掴みくいっと引っ張ると座った目を面倒臭そうにしかしながら真っ直ぐ視線を向けるロードに顔を俯けた

「早く寝ろと、言っただろ」

「…一緒に」

「…は?」

「………」

何言ってんだ俺。熱でついに頭まで逝かれちまったのか?それでも言葉に出してしまった以上なかったことにはできない。馬鹿じゃねェのか、そう返されることをただ待っているとその予想とは裏腹に身体は一肌に包まれ一瞬思考が止まってしまった
顔を上げるとロードが困ったように、けれど優しく笑ってくれていてとんと規則的に叩かれる背中に自然と睡魔が襲ってくる。本当、ロードは読めない。普段は人を寄せ付けないはずなのにこういうときは優しく隣にいてくれる、俺の欲しいものを読み取って与えてくれる
だから、憧れる。俺もロードみたいになりたいと

「お前が寝付くまでこうしておいてやる。だから、早く寝ろ」

「ありがとう。…おやすみ」

「あぁ」

試験であることを忘れただロードにその身を預けた




(次に目を覚ましたときにはゴール地点に着いていた)




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