カオスコール


もとの色などわからないくらいに紅く染まった衣服。微かに上下する胸が纏う者の生を知らせるが、それが尽きるのも時間の問題だと誰が見てもわかった。
焦点があわない琥珀の瞳がスコールを見上げている。おそらく、視覚は一足先に死んでいるだろう。虚ろな視線は輪郭すら捉えているか疑わしい。
それでも、“見上げられている”と理解できるのは、倒れている男がスコールの気配を察しているからだ。

「……ス、…ール」

その言葉を皮切りに、末端から男の身体が光とともに消失を始めた。浄化がはじまったのだ。
スコールの読みでは、男はまだ消滅しない。そこまでの損傷は与えなかった。次の戦いでも、その明るい笑顔が見られるはずだ。

「……俺も、すぐに行く」

そして、次の戦いでは、共に在れるよう祈る。
そのとき、浄化を受けた男はもちろんスコールも記憶は無いだろうが、魂が覚えているだろうと信じている。

(――だから、待っていてくれ)

空へ昇るように消えていった光を目で追いながら、スコールは想いを馳せた。

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