ラグスコください
2012.05.31.Thursday
「可愛い」
そう言われる度に、むず痒そうに居心地を悪くしてしまうのは、その言葉はどちらかというと彼にとっては不名誉なものであるが自分からの想いだと思うと否定することも出来ない、とやりきれなくなるからなのだろう。それでも、難しい顔をして渋々ながらもそれを受け入れてくれるのは、それだけ愛されているからだと、ラグナは身のうちに広がる暖かい気持ちと衝動のままに、未成熟な細い身体を抱きしめた。
「食べちゃいたいくらいだ」
そう言って、眼前の白い首筋をかぷりと甘噛みしてやると、ゆるくではあるが拒絶の言葉が返ってきた。
「……やめろ」
もっとも、腕の中の四肢に力は入っていないので、それは形だけの抵抗だとわかる。
「俺なんか食べたら、あんた死ぬぞ……」
少し調子に乗って甘噛みを続けていると、突然スコールがそう漏らした。
「毒に対する抵抗をつけるために昔から変なものを色々口にしてるんだ。多分、内臓とかやばいことになってるだろうな」
あくまで比喩表現であるのだが、生真面目な彼には伝わらなかったのか、と甘くなっていた空気の鎮静化を感じ、ラグナが顔をあげたときであった。
白皙の美貌はほんのりと桃色に染められ、決してラグナと目を合わせまいとする灰青の瞳はわずかながらも熱っぽく潤んでいる。
「やっぱスコール可愛いっ」
彼にしては少々饒舌な説明も、おそらくただの照れ隠しだったのだろう。
本日二度目の不名誉な印象を告げられいい加減観念したのか、もういい……と呟いたのを合図にラグナは再び目の前の肌を貪ることにした。
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