KIRIBAN | ナノ





Green




「明日、デートするぞ!!時間、空けとけよ!」



私の都合なんて聞かずに、勝手に予定をたててしまうソウさん…

デートってはっきり言ってるけど、私たちって…

まだ付き合ってないよね…

そんなことをされたら、勘違いしちゃうよ

してもいいのかな…?

勘違い―…‥

デートなんて他の女優さんにも言ってるよね…たぶん…

でも、ソウさんの事を知れば知るほど、不誠実な人には思えなくて

俳優 二ノ宮ソウ…というよりは

二ノ宮壮という一人の男性に私は惹かれている

でも、きっと私のこの気持ちは―…‥

ソウさんには重荷になるだけ…

彼の事を思うこの気持ちには蓋をすることにした

彼の回りに私みたいなタイプがいないだけで、一般庶民が物珍しいだけなんだと自分に言い聞かせた














指定の時間に指定された場所に行く

こんなとこで待ち合わせなんてしていいのかな…

真っ昼間の渋谷…

人なんて溢れるほどいるのに、ソウさんが来たらパニックになって動けなくなっちゃうよ…

自覚しているようで、無自覚なんだと思う

着信に気がつき、電話に出る…

あ…‥ソウさん…



『はい』

「もう、着いてるか?」

『はい。います…』

「そっか…。あ、いた!」

『え?どこですか?』



キョロキョロと見回した時…


ヴォン


グリーンのジャガーが横付けされて、窓が開いた



「ヒカリ!こっち!」



ソウさんに電話で言われて、そちらに向かってパッと走り出した



「え?ニノミー?」

「嘘!!」



回りの声が私の耳にも届き、早くここを離れないと、という私の気持ちを焦らせる

車から出てきたソウさんは、助手席のドアを開けてくれて…

そんな風にされた事のない私は戸惑ってしまった



「早く!」



苛立った彼の言葉に慌てて車に乗り込む

携帯で写メを撮ろうと車の回りに人が集まってきた

進路を塞がれる前に車を急発進させたソウさんを横目でチラッと盗み見る

長い睫毛…

鼻も高くて、肌も綺麗…

いつもラブトリップの暗いライトの下でしか見たことがなくて、新しい発見に心が躍る



「何、ニヤケてんだ!」

『…!……ご、ごめんなさい…』



やだ…

ニヤケてたなんて、恥ずかしい…

顔が熱くなって思わず下を向いた



「俺の顔になんかついてんのか?」



運転しながら顔をパタパタと叩く仕種がなんだか可愛くて、思わず吹き出してしまった



「ちょ、お前!笑わずになんかついてんだったら取れよ!」



ソウさん、本気なんだ…



『クスクス…もう取れましたから、大丈夫ですよ』














俺様で、我が儘王子で…

でも、すごく真っすぐで…

俳優という職業が大好きで誇りを持っていて

その情熱だけは、誰にも負けていない

私が知っている 二ノ宮ソウという人物

もっと、もっと彼の事を知りたいと思う

私は…欲張り…ですか?
















デートと聞いて、ソウさんのイメージから買い物に付き合うんだろうと思っていた私は…

着いた場所にびっくりした…



『…ここ…ですか…?』

「あぁ。」



山の奥深く…

緑しか見えないその場所は、ソウさん専用の流鏑馬練習場だった



「大河、決まったんだ。時代劇だから、本格的に練習しないと…」

『おめでとうございます♪』



自分の事のように嬉しくなって喜んだのに、脳裏に浮かんだのは

私が来たら邪魔しちゃうんじゃないかという事



「ヒカリに見せたかった。撮影に入ると見せてやれないしな」



やっぱり、勘違い…しちゃいそうで…

手をギュッと握りしめて自分の気持ちに歯止めをかけた
















初めて見る流鏑馬、騎射に興奮して…

いつもと違うソウさんにもドキドキして…













少し休憩だと言って芝生に寝転んだソウさんの隣に私も座った

都会の日常から離れた自然の中で、私の耳に聞こえてくるのは鳥の囀りと木々が風に靡く音

そして、いつの間にか眠っている

ソウさんの寝息だった

穏やかな寝顔…

誰にも邪魔されず、彼を見る事ができる

この世界に私たちしかいないんじゃないかと思うくらい…

静かな空間…

ソウさんを諦めないと―…‥

気持ちに蓋をしないと―…‥

そう考えていた私の心は温かな空気に包まれて

いつの間にかどうでもよくなっていた

彼をずっと見ていたい…

隣で…ではなくても…

テレビやスクリーン中の彼でも…

こんなに努力をしている人だと知って、ただ素直にそう思った
















いつの間にか私も眠ってしまっていたみたい

瞼が重くて目が開かない

だけど、目を瞑っていても日差しが遮られたことに気がついた

フッと目を開けると、かなり近い位置にソウさんの顔があって…



『!!そ、ソウさ…。…近いで…す…』

「ヒカリが悪い…」

『え…?』

「俺の前で無防備すぎる…」



熱っぽい潤んだ瞳で見つめられると、私の頭もショート寸前になってしまって…



『…い、悪戯しようとしたでしょ…?』

「いや…キスしようとしてた…」



抵抗する間もなくて

なぞるように、奪うように、角度を変え吐息を交えながら唇を重ねた

体が…熱くて…

頭の奥が痺れて溶けてしまう



『や…』



残っていた理性でソウさんのキスから逃れる

私が抵抗したからなのか、ソウさんの表情が曇った



「…お前は、違ったのかよ…」

『………』

「ヒカリは、俺の事…好きじゃないのかよ…」



ソウさんの瞳に射竦められる

視線から逃れる事ができない



『…ソウさん…、なんで私にキスしたの…?』



声が震えてしまう

ソウさんが好きで、一度きりの思い出としてキスを受け入れても良かったんじゃないかとか…

必死に頭で考えたのにそんな事を聞いてしまっていた



「…好きだからキスしたに決まってる」

『え…ホントに…?』

「お前は…?ヒカリ…」



私の答えなんて決まっていて、彼にそっと耳打ちすると…

みるみる赤くなっていくソウさんの頬…



「俺のキスを拒むなんて、100年早ぇーんだよ!それから…」



私の耳に彼の唇が触れて…



「敬語とさん付け、禁止…」

『…んっ…』



そのまま耳を甘噛みされて、声が漏れた

私の視界には、彼の愛車と同じ緑が広がっている

彼によく似合う色をバックに私たちは気持ちを確かめあった



「もっと、声…聞かせろ…」

『…ここで?』

「…黙れよ…」



声を聞かせろと言ったり、黙れと言ったり…

ホントに我が儘王子…

でも、私だけの…愛しの王子…



『ソウ…好き…』

「お前、反則…!…マジ…可愛い」









-end-

2010.06.03





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