KIRIBAN | ナノ





My love





「何考えてんだよ、ジィさん!!…くそっ…」



真相を確かめたくて、ジィさんのもとを訪ねた



「おい、明彦!待ちなさい…話を…」



最後まで話を聞いてる暇なんてあるわけない

何で…こうなった…?

一体、どこでボタンをかけ違えた…?

とにかく、止めないと…

俺は、ただ走った

彼女が…

華帆ちゃんがいるであろうその場所に…










彼女と付き合い出してもう1年になる

生徒と教師なんて禁断もいいとこだけど、俺達は付き合い始めからお互いの距離感が心地好くて

ベッタリになることなく今も順調なんだと思っていた

それなのに…















『え?お見合いですか?』

「会うだけでいいんですよ…」



理事長に勧められてしまった…

お見合い…



『でも…』

「貴女にいい人がいるかも…という事をわかっての頼みなんです」



いい人…

理事長は知っているはずだけど…

私と明彦の事…

それでも頼んでくるって事は



「…ちょっと…訳ありでして…」



理事長が頼んでくるくらいだもん

よっぽどの事だと思う



『あの…ホントに、会うだけでいいんですよね?』















理事長の顔を潰すわけにもいかず、結局私はお見合いに臨むことになった

だけど…

なんとなく、この事を明彦には言えずにいた

喧嘩をしてるとか…

関係が危ういとかではなく

ただ…なんとなく言いそびれていた

わざわざ言うほどの事でもないと思ったし、私の中では仕事の一環として処理をしようとしていた



お見合い当日の日は土曜日

金曜の夜は、明彦…バイトで遅くに帰ってるよね…

わざわざメールしなくてもいいかな…

なんとなく相手に失礼かなと感じ、携帯の音を切った
















〜♪



携帯の着信音で目を覚ました…

夕べも深夜の帰宅

年齢を偽ってバイトをしてるから、その日のうちに帰ることはない

着信相手を見ると…ののちゃん?



「…はい…」

「あ、深國くん!あのね、すごいの見ちゃったから電話したんだ!」



いつになく興奮したののちゃんの声…



「ん〜…どうしたの?…そんなに興奮して…」



上半身を起こし、携帯を肩に挟んだまま腕を伸ばす



「うん♪華帆先生を見かけたんだけど…」

「…え…?」



耳を疑った…

そんな話、聞いてなかったから

着物姿…?

いや、華帆ちゃんもたまの休みに着物着たくなっちゃうよね〜?

って、そんなわけない…

まだ寝起きでフラフラの頭を覚ます為に、シンクに頭を突っ込んで水道の水をかぶった



…見合い…?

それくらいしか考えられない

しかも、俺…何も聞いてないし…

俺の脳裏に浮かんだのは、じいさん絡みだという事…

それ意外に彼女が俺に黙っているはずがないと思った

彼女が裏切るはずがない…

何度も自分自身に言い聞かせる

そうしないと…

立っていられなかった

何度かけても繋がらない電話にも苛立ちを覚え、まだ雫が滴る髪の毛もそのままにうちを飛び出した

頭の奥に金属音が響く…

彼女の事を信用している反面で不安が広がるのを感じていた















待ち合わせ30分前…

ホテルのロビーで相手の方の到着を待つ

お見合いなんて初めてだから緊張してきちゃった

久しぶりの振り袖に背筋も伸びる

バッグからコンパクトを取り出し前髪を整える

ホントは着物姿も明彦に見せたかったな…

でも、私の中ではこれは仕事として処理をしようとしている

後ほど理事長はお断りをしてくれると言ってくれたし…

何となく憂鬱な気持ちのまま、取り出したコンパクトを戻そうとした時、携帯の着信ランプに気がついた

それを取り出すと、明彦からの着信が朝から5件…

何かあったの…?

一気に不安になる

着信履歴から通話ボタンを押そうとした時…



「お待たせしました…」

『あ…いぇ…』



お見合い相手が到着

明彦に電話をかけられないまま携帯をバッグに戻した














ののちゃんが見かけたというホテルに飛び込んだ

ただ、ここに着いても何処に行けばいいのかさっぱり見当がつかない

1Fロビーか…

最上階のレストランか…

それとも、場所を移したか…



「…あ…」



視界の端に着物を着た女性を見つけた

後ろ姿だから人違いかもしれない…けど…



「…華帆…ちゃ…ん…?」



指先に痺れが走る

足も思うように動かない…

だけどチラッと見えたその横顔は紛れもなく彼女だった

動かなかった足が自然と彼女目掛けて動き出す

談笑しているのがわかる…

俺の知らないところで

俺の知らない奴に

笑いかけんなよ!



「ヤッホ〜♪」

『あ…明彦…?』



彼女の腕を掴み、二人に笑いかける



「君は?」

「誰でもいいでしょ?…てかさぁ…この場合は彼氏だって思わないとねぇ?」


何言ってんだよ…俺…

子供じゃん…



「…で?華帆ちゃんは着物姿で何してんの?」



やばい…

止まらない…



『すみません…。森田さん、彼は…』

「ど〜も〜。華帆ちゃんの彼氏の深國明彦です♪」



さっきとは打って変わって見合い相手らしき人物に笑いかける

でも…

きっと俺の顔は引き攣っていただろうな…



『あ、あの…すみません。…私、お会いしてお断りをするつもりだったんです。………ホントに失礼な事を…』



そう言って頭を下げる華帆ちゃん

彼女を見て、俺が彼女にそうさせてしまったのだと気がついた

…やっぱ…子供じゃん…俺…



「頭を上げてください。…僕も同じなんです。父を安心させる為だけにお見合いを引き受けたんです。…僕にも彼女がいるんですが、父に紹介しないまま、話が進んでしまって…。…深國くん…?」

「…はい…」

「君にも申し訳ないことをしたね…」



こんな失礼な態度をとった俺に、この人は頭を下げる







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