KIRIBAN | ナノ





おはようをくれた君へ





『…うっっ…うぅっ…』

「…ったく、いつまで泣いてんだよ…」

『だって…ソウが…』



涙の止まらない私をソウが優しく抱き寄せてくれる



「作り話なんだから、いい加減泣き止め!」

『ソウが悪いんだよ…ソウが…』



ハイハイとため息をつきながら私の背中をポンポンと撫でてくれて、その心地好さにだんだんと私の気持ちも落ち着いてくる

口は決して良いとは言えないソウ

わかりづらいけど、貴方が優しい事を私は知っている



「せっかく初めて俺ん家にお泊りに来て、何も泣かなくてもいいだろ…」



ちょっとふて腐れた顔も…

私しか知らない…ソウの顔…



『…ごめ…ズビッ…』

「でもさ、お前のその反応見たら…自分の演技に自信が持てる」



私の肩に回されたソウの手が私の髪に触れる


私のアパートに来る事はあったけど、ソウのマンションはパパラッチにマークされていたから初めて来た

だけど私との交際を公表して、ソウの周りが落ち着いてきた事もあって呼ばれたのだった

二人きりは初めてではないのに、慣れない空間に戸惑った私を見てソウが自分が出演した映画のDVDを見せてくれたのだった

さりげなく私がいつも通りに過ごせるようにしてくれる

ソウはホントに優しい…



「もう、スクリーンの中の俺の話はいいだろ?」



その言葉にドキリとすると同時に彼に後頭部を押さえられ唇が私の頬に触れる



「…泣き止め…」



そっと頬を通して囁かれた言葉を聞くと自然と涙が止まった



『…あれ…?』



自分でも不思議だったけど、ソウの自信満々の表情を見ていたら笑いが込み上げてきて

この人で良かった…なんて事を思ったりして…

彼に抱きついて背中に腕を回した



「…なぁ…」

『ん…?』

「お前…さ…」



中々言葉の先を言い出さないソウを見上げると、少しだけ頬をピンクに染めた彼の視線とぶつかる

不思議に思いながらソウの言葉の続きを待っていると



「…ノーブラだろ?」

『もう!ソウのエッチ!!』



さっきまでの頬のピンクはなんだったのか…

ニヤニヤと笑うソウは普通の男の子で…

思わずソファーにあったクッションを持つと、彼の顔面に目がけて投げつけた



「うわっ!てめぇ、役者の顔狙いやがったな!」



いとも簡単にかわされてしまったけど、そう言いながら私を見る目は優しくて…



『ソウがデリカシーのない事を言うからでしょ!』

「ホントの事言って何が悪い!」



あ、開き直った…

すぐにムキになるんだから…

だけど、そんなとこも…かわいい…



『…あ…』

「もう、いいだろ…」



彼に捕まれた手首はすでに熱くて

動きが止まってしまう

彼の瞳が揺れて…

添えられた手の平に頬を委ねると、彼の柔らかい唇を受け止めた























『…ん…』



寝返りを打ったヒカリ

起きるかと思ったが、まだ穏やかな寝息を立てて寝てる

なんだろうな…この気持ち…

守りたい…

素直にそう思う

当たり前の事を教えてくれた彼女

チヤホヤしてくるだけの俺の取り巻きもこいつには関係なかった

すげー、ハートが強いよな…

手なんて俺の片手でコイツの両手をスッポリと覆えるくらい小さい…

腕力もないくせに、ラブトリップではでっかいビールジョッキを運ぶ事もある

媚びたりもしない…

俺…どんだけヒカリの事、好きなんだよ…

わかってんのか…?

きっと、自分ばっかりが好きなんだ、なんてつまんねぇ事考えてんだろうな…

俺のがお前の事、好きだっての

なんか…悔しいって思うのは俺の我が儘なんだろうけど…

やっぱ、悔しいからしばらくお前に好きって言ってやんねぇよ

でも、お前が好きって言ってきたら…

俺も言う…

ありったけの気持ちを込めて…





朝が来る楽しみをくれたのも…ヒカリ

おはようの本当の意味を教えてくれたのも…ヒカリ





『…ソウ…す…き…』



ヒカリの寝言に心臓が飛び出すかと思った

お前だけだぞ…

俺をこんな気持ちにさせられるのは

自覚がないのも…良いよな…

ヒカリの寝顔を見てるだけで、癒されて心があったかくなる


クスッと笑みを零すと

彼女の瞼が押し上がった



「…おはよ…」

『お、おは…よ…?』

「なんで疑問形なんだよ」



腹の底から笑わせてくれるのもコイツだけ



『…だって、いつから起きてたの…?寝顔見てたんでしょ?』



うん

当たってる

中々、鋭いな


唇を尖らせて、寝起きに拗ねるヒカリが可愛くて

彼女の手を取る



「おはよう、ヒカリ…大好きだ…」



真っ赤になる彼女を確認して、左の薬指に誓いのキスをする

いつかは俺の選んだお揃いのリングを嵌めてもらうために…

永遠に彼女の『おはよう』を俺のものにするために…











-end-

title:確かに恋だった 様

2011.07.07



44444番 ヒカリ様に捧げます
大変遅くなり申し訳ありません
これからもよろしくお願いします

ヒカリ様のみお持ち帰り可です



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