KINDAN | ナノ





春色に染めさせて




「よし、今日もバッチリいい男♪」



ボクの朝は結構早い

だってちゃんと身だしなみを整えないとファンの子たちの夢を壊しちゃうもん

人より早く起きてシャワー浴びて、鏡の前でセット…

朝ごはん食べる暇がなくても欠かさず鏡チェックをする

走って学校に行ったらせっかくのセットが乱れちゃう…

遅刻は、ボクのポリシーに反するからしないんだ

でも、授業はたまにサボっちゃう…かな?

体育とか苦手だし?

保健室で曲を考えたり、詞を考えたり…

必ず出る授業は、英語

だってプロのミュージシャンを目指してるんだから、発音とか英語の歌詞とか役に立つかな?って…



この日も髪をセットし終えて、ご機嫌で家を出た

天気もいいし、気分最高!!

でも、学校に着くなりそんな気分はぶっ飛んだ…



「こら!なんだ、その髪は!」



ゲッ!!この声は…



「あ、嵐士!校門は斎藤先生が頭髪検査してるよ…」

「え〜?マジで?今日は学校サボりたくないんだけどな…」



せっかくセットした髪がいい感じに決まってるのに…



「仕方ない…。いつもの手を使っちゃお…」



今来た道を戻って、一番低い塀をよじ登る

ここを越えると桜の木があって、いつも頭髪検査の朝はここで時間を潰す

先生たちに今まで見つかってないのは、ここがバレテないからなんだよね

今はいいけど、秋から冬にかけてなんて葉っぱすらないから姿なんてまる見えなんだけど…

奇跡的に見つかってないのは、ボクの日頃の行いがいい証拠なのかな…

なんてね…

そんな事少しも思ってないけど



せっかく桜をバックにしても、誰もこんなボクを見てないなんて…
つまんないな…

桜とボクって、きっと似合ってると思うんだけどな…

うん…

次の曲のコンセプトは桜をイメージしてもいいかも…

本物の桜の前でライブなんて出来たらいいけど、それは今から準備するのは無理だもんね



あ…

誰か来た…

…誰…?



『ん〜…いい天気!桜も満開で気持ちいいなぁ…』



こっち…見てる…

っていうか、桜を見てるのか…

あんまりよく見えないな…

誰だろう…?



ガサッ



『誰?誰かそこにいるの?』



あちゃー…バレタみたい…

こっちに近づいて来る



「おはよう!センセ…?…かな?…」

『な、なんでそんなところにいるの?』



びっくりしてる…

でも、綺麗な人だなぁ…

新任のセンセかな…



「えっと、まだクラスは見てないからわからないけど、2年の彩木嵐士です♪」

『2年の彩木くんね?危ないから、ゆっくり下りてきて!!』

「は〜い♪…って言いたいけど、ボク頭髪検査から逃げてんの。斎藤先生にチクったりしない?」

『し、しないから…。ゆっくりよ?』



あれ…?本気で心配してるっぽい…

なんか、すごく新鮮な反応なんだけど…

オロオロしてるし、可愛いな…



「…あ…」

『え?嘘!!』



思ったよりも高い位置から手を離しちゃって、着地失敗…



「いてて…」

『だ、大丈夫…?』



本気で心配して、顔を覗き込まれた…

やっぱ…綺麗な人だなぁ…

その一瞬でボクは恋に落ちたんだ…



「アハッ♪着地失敗しちゃった」

『捻挫とかしてない?保健室に行かなくて大丈夫?』

「大丈夫だよ。これでも男の子だからさ…。あ、でも…」



足は何ともない…

たとえ、捻挫しててもいいんだけど…



『どうしたの?どこが痛い?』

「…ここが…」



胸を押さえて、彼女を見つめた

フフ…♪

キョトンとしてる…可愛いなぁ



『教師をからかうもんじゃないわよ?彩木くん!』



いきなり先生の顔になった…

そのギャップもいいな

あぁ…

どうしよ…

心臓のドキドキが激しくなってきた

ファンの子たちにも感じた事のない

胸の奥があったかくなる感じ…



「ごめんなさい…。センセ、怒らないで…」



上目遣いで…センセを見つめると…

途端に顔を真っ赤にして…



『さ、斎藤先生にはここにいる事、内緒にしておくから…』



サッと立ち上がってボクに背中を向けて…

でも…

耳もだけど、首まで真っ赤だよ…センセ♪



「ありがと。…センセ?」

『…な、何?』



ドキドキをボクに悟られないようにしてる?



「ここに…花びら…」



センセの前に回り込み、前髪についていた桜の花びらを取る

さっきよりも顔が近付いた事もあって、益々赤くなって…

センセの行動の何もかもが、ボクの心をくすぐってるって、わかってないよね?



『…ち、近いから…。ありがとう…。じゃ、私はこれで…』



覗き込まれてボクから逃げるなんて、今まで体験したことがないよ…

ホントなら、キスくらいしても良かったんだけど

一気に決めるのもね…



「セ〜ンセ♪ボクの名前、忘れないでね?」

『…赤い髪の彩木くんよね?…忘れません!』



あ…

走って行っちゃった

センセの名前も聞き忘れたけど…

運命の出会いなら、もっと親密になれるよね…



桜…運命の出会い…

これで、一曲書けそう♪



フフ♪

センセの事、気に入っちゃったから

また学校に来る楽しみができたよ♪
















-end-

2010.05.07


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