KINDAN | ナノ





とてもかわいいですよ、先生?







『ねぇ、緒方くん!見て見て!!』

「…はい?」



確か…授業の資料を集めるために青城大学の図書館に居るんですよね?

彼女が見ているのは…



「…絵本…ですか…?」

『うん!』



屈託のない笑顔で微笑む貴女は、大きな瞳を揺らしながらその絵本を見ていて…

私の姿なんて目に入ってない証拠ですよね

なんとなく自分の存在を誇示したくて…



「確か…資料集めに此処に来たんじゃなかったですか?脱線もホドホドにしてください…。全く、貴女という人は…」



軌道修正をする私の身にもなってくださいよ

おおらかな貴女に恋をした私の苦労を…

貴女は知らない…



『そっか…ごめんなさい』



シュンと肩を落とし一つ息を吐くと、教師の顔になって資料を探しに行くその横顔は…

私の好きな顔でもあり…

心臓がトクンと音を立てた事に貴女は気づきもしないんだ…





凛とした涼しい顔で本棚に向かうその背中を追いかけると、その表情が本心でない事に気がつくんですよ

その表情の下に隠した貴女の心は私に責められたと思って沈んでますよね?

本を探す貴女の背後に立ち、彼女が脇に抱えていた絵本をそっと抜き取ると…

思っていた通り貴女は振り返るんです



『きょうへ…んっ…』



肩越しに唇を重ねるという行為に貴女は私の腕の中で小さく震えて…

此処は、大学の図書館で

誰かに見つかるかも…

なんて考えが頭の中を駆け巡っているんでしょうね…?

私にはどうでもいい事ですよ…

唇を離しても僅かに動くとまたキスしてしまいそうなこの距離に貴女の瞳は大きく揺らぎ

私はまた…貴女に恋に落ちるんです



『…もう…意地悪…』

「こんな私の事が好きなのでしょう?」



顔を真っ赤にして口をパクパクさせて…

ホントに貴女って人は…



「…とてもかわいいですよ、先生?」

『ちょ…』



益々顔を赤くする貴女を一人残し、専門書の並んでる棚に向かうと

タタタッと後ろから駆け寄ってくる足音をこっそりと確認するんです

ヒソヒソ声で



『ちょっと、杏平!先生なんて呼ばないでよ…』



服の裾を握られ、私は貴女の行動にまた恋に落ちる



「貴女が先に私の事を『緒方くん』なんて他人行儀に呼んだんですよ」

『あ…。…ごめんなさい…』



また私の言葉にシュンとして…

貴女の表情はクルクルと変わって私を飽きさせない



「怒ってませんよ…美花」



耳元で彼女の名前を囁くと耳まで真っ赤にして…



「ホントに…貴女はかわいい…」



美花の髪をそっと撫でれば、照れた笑顔を向けてくれる



『は、早く資料を探さないと…』



急に思い出したように背を向けても照れ隠しだと知ってます

彼女の後に続いて歩き、資料探しの手伝いを始めると

また教師の顔になる美花…

きっと無意識に私を煽っているんでしょうね…

でも貴女が笑ってくれる事が私の最大級の喜びなんですよ

ずっと、ずっと

私の隣で極上の笑顔を私だけに向けてくださいね…
















-end-

title by : 空想アリア様


2010.12.05



jewelrybox 藤咲優香様に捧げます

HAPPY BIRTHDAY 優香たん(^q^)

1日遅れて申し訳ありません




*幸

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