KINDAN | ナノ





voyage-絆を結んで-type M





『はぁ〜…もう、最悪だよ…』



自分でもびっくりするくらいの大きなため息…



「なに〜?そんなに大きなため息ついちゃって…幸せが一緒に逃げちゃうよ〜」

『深國くん…』



ホテルのロビーで私の隣に座り、彼、深國明彦がそう言った



『こ、こんな所にいるのを他の先生に見つかったら…』

「大丈夫だよ♪今頃、みんな集まって麻雀大会でもやってんでしょ?リサーチ済みだから…」

『貴方がそう言うんだから、間違いないんだろうね…』



今は、修学旅行の真っ最中…の夜

生徒は…部屋にいないといけないような時間…



「今日は散々だったね…美花ちゃん!」

『…うん…巻き込んじゃって、ごめんね…』

「謝らなくていいよ〜♪俺は楽しかったからね〜」


















この日、私たちのクラスのバスは生徒が一人足りないと大騒ぎ…

いなかったのが、野々原くんだったから深國くんも一緒になって探してくれて

バスは予定通りに出ないといけなかったから、私が残って野々原くんを探すことになったんだけど…

彼までバスを降りて探すって言い出して、2人で散々走りまわって探したんだよね

携帯も深國くんがかけても出ないし…

その後、次の目的地に着いた緒方くんから連絡が入った



「え〜?野々ちゃん、バスにいたの?」



さすがの深國くんも頭を抱えていた



『どういう事?』

「野々ちゃん、最初座っていた席が眩しかったみたいで、一番後ろで丸まって寝てたんだって〜」



騒ぎに気がつかず、眠りこけていたみたい…

2人で顔を合わせると、おかしくなってきた

深國くんは、近くのベンチに座ると



『美花ちゃん、とりあえず落ち着こうよ…』



そう言って、ベンチの隣をトントンと叩く

これは、いつも屋上でやる深國くんの仕草…

私は深國くんの隣に腰かけた



「教師って大変だねぇ…」

『もう、人事みたいに言わないで…』



余裕で笑っている深國くんに、ベーッと舌を出す



「教師の態度とは思えないよねぇ〜」

『どうせ、私は…』



その時、手に違和感を覚えた…

私の右手に添えられた深國くんの左手…



「危なっかしいんだよ、美花ちゃんは…一人にできるわけないでしょ?」



私の鼓動が早鐘をうつ



「まっ、俺としては思いがけず美花ちゃんと2人になれたから、いいんだけどねぇ」



その言葉にまた私の心臓がドキドキする



――深國くんに聞こえちゃうよ…



俯いていた私の顔を深國くんはたったの一言で上にあげた…



「ちょっとだけ…デートしようよ♪」



そう言うと、重ねていた手を握り締めて立ち上がり



「行こっ!」



私は深國くんに引っ張られる形になっていた



――深國くんってこんなに強引だった?



確かに、今、私たちを知っている人はここにはいない…

少し強引かと思った彼の行動にはちゃんと裏付けがある

私は深國くんに手を引かれたまま、土産物屋へと入った



「美花ちゃんて…こういうの好き?」



そう言って彼が指差したのは、折り紙…



『かわいいわね…この折り紙…じゃない。千代紙ね!』

「うん、キレイだよね?俺の美花ちゃんのイメージってこんなかも…」



なんだか恥ずかしくなって、それ以上は何も言わなかった




















『深國くんも野々原くんを見つけられなかったって…一番後ろで一体どんな寝方をしてたのかしら…』



その日の騒動を思い出し、クスッと笑みがこぼれた



「あー、普通に横になってたよ?野々ちゃん…」

『えっ?』



深國くんの言葉にびっくりした



――…知ってたって事…?



『ちょっ、深國くん!!まさかっ!!』

「ごめんねぇ、どうしても2人になりたくて…足、ちょっと触らせてね…」



2人になりたくて…という言葉を聞くと、何も言えなくなってしまった

彼は、私の足を抱えると靴下を脱がす



『え?…あの…』

「シィッ…黙って…誰か来ちゃうよ」



私を驚かせたり、黙らせたり…私は間違いなく彼に翻弄されている

彼に触れられている場所が徐々に熱を帯びてくるのを感じていた



――恥ずかしい…



「はい!できた…」



そう言うと、彼は私の足を下ろした



『何?』



深國くんが何をしたのかわからなくて、自分の足を覗き込むと、かかとに赤い絆創膏が見えた



「靴ずれ…したでしょ?今日2人で入った土産物屋に千代紙柄の絆創膏があったから」



――気がついていたんだ…深國くん…だから、あの店に入ったのね



「俺のせいだからね…ごめんね…」



そう言うと、絆創膏の入った缶を置いて立ち上がった



「おやすみ…美花ちゃん…」

『…おやすみなさい…』



深國くんが立ち去った後、まだ彼のぬくもりが残る隣にそっと触れる

まだまだ付き合い始めたばかりの私たち…

なかなか回りの目も気になり、2人きりなんてなれない

彼が置いて行った絆創膏の缶を持つと、彼の優しさを感じて笑みがこぼれた

彼の策略に嵌まって奔走…

その揚句が…靴ずれ…だけど…

思いがけない深國くんからのプレゼントに心があったかくなった





今でも、私の部屋には彼からもらった絆創膏と缶がある

大切な思い出…


















-end-

∴typeMは深國のMです(〃∀〃)

2009.05.

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