MUSICIAN | ナノ





巡り会えた奇跡と共に






「はい、これ…」



彼からバスタオルを受け取ると、思わず顔が赤くなったのがわかった



『あ、ありがとう…ごめんね。お風呂貸してもらうなんて…。やっぱりホテルに泊まれば良かったね…』

「…気にしなくていい。俺がそうしたかったから…」



彼に促されてバスルームへと急ぐ



――…私って緊張しすぎ…




私のうちのお風呂が壊れてしまい、修理に1週間かかると言われてホントはホテルに行こうと思ってた

でも…龍が…



「うちにくればいい…」



って…で、甘えてしまった

龍のマンションには何度もお泊りには来ている

その逆だって…

緊張はそんな事ではなかった

櫂の言葉…



「美花ちゃん、一週間龍のとこかぁ。プチ同棲だね♪」



私はただ、お風呂を一週間借りるだけなんだと思っていたのに…



「美花さえ良かったら、うちから通ったらいいだろう…」



断るなんてできなかった

口実ができて、常に龍と一緒にいれて…すごく喜んでいる私がいたから

















「いつもは外食で済ませるが、いいな…こういうの…」



キッチンに立っている私を見て、龍が呟く



『は…恥ずかしいから…』



彼の視線から逃げるように背中を向けた

やっぱり食事くらいは…ね?



『いつも泊まりに来た時も、外で食事を済ませてからだったもんね?』



私のその言葉に龍の顔が綻ぶのがわかった



――あ、その顔…好き…



そう思った時、龍の手が伸びてきて後ろから龍の熱を感じた



『!…龍?どうしたの?』



私の前で交差されたたくましい腕にそっと触れる



「美花のそんな顔見たら…触れたくなった…」

『…あ…』



そんな事言われたら、ドキドキが止まらなくなる

龍に聞こえてるんじゃないかというくらいの心音にも動揺した



『ね…ご飯、作れないよ…』



動揺を悟られたくなくてホントはまだこのままでいたいのにそんな事を言ってみる



「…美花…」



龍の大きな手の平が私の顎を持ち上げ、そのまま唇が重なった

背の高い龍だからできるのかな…こんなキス…

頭がボーッとして、変な事考えちゃってるし…



「美花と一緒に暮らしたら、毎日美花のこんな顔見れるのかな…」



真上にある彼の綻んだ顔…

ホントに…

不謹慎にも、この時間が長く続いてほしいと思ってしまった








普段、仕事に行けばいつも一緒なのに…

私って…どれだけ龍と一緒にいたいんだろう…

でも、龍も同じ様に思ってるって自惚れてもいいのかな

















トロイメライの仕事をしながら当たり前の日常を龍と過ごす

夢のような一週間が過ぎた

とにかく、ずっと一緒にいた私たち

それでも、帰りたくない…って思ってる

こんな事を言うと、龍を困らせてしまうだけなのにね…



「また、泊まりに来いよ…」

『…うん。お世話になり…』



言葉を最後まで言い終わらないうちに、龍に抱きしめられた



「…なんか…帰したくない…」

『!!…フフッ…』



思わず笑みが零れた

だって…

自惚れでも何でもなく、龍も私と同じ気持ちでいたから



「今日は…俺が美花のとこに泊まっていいか?」



もちろん、私の答えは決まっていて



『…うん♪喜んで!』

「というか…一緒に暮らさないか?」

『え…?龍、本気?』



彼の腕の中で聞いてみたけど、冗談でこんな事は言わない人…

そんなの私が一番わかってる



「まずは、美花のご両親に許可もらって。佐藤さんにも相談して…」



クスッ

彼らしい…でも…



『私の返事、聞いてないのに…?』



後に続く言葉を待っている龍にキスしたくて、目一杯の背伸びも届かず彼の顎にキスをしてしまった

思わず彼と視線がぶつかる

視線が絡み合って、自然と目を閉じると唇に熱を感じる

彼の服をギュッと掴んだ



『…気持ちが繋がってるって、すごいね…』



龍の耳元で



『同じタイミングで…同じ事考えてたよ…』













相思相愛になるのなんて、奇跡だと思っている

そして、同じ事を考えてるなんて…

奇跡の積み重ねなんだね…恋愛って…

私はこの時の龍のぬくもりを

決して忘れない…















-end-

2010.01.20


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