MUSICIAN | ナノ





貴方の魅力は誰よりも知ってる











「ねぇ…」

『何?…瑠禾…?』



いつも唐突な瑠禾だけど、今日の瑠禾はいつにも増して唐突だった



「堅司のメガネを外した顔って見た事ある?」

『え…?堅司さんの?』



瑠禾が黙って頷く



『ど…して…?』



なんだか胸騒ぎを覚えてドキドキする



「昨日、夢を見た…堅司の…」

『うん…』

「そしたら、メガネかけてた」



それは当たり前なんじゃないかと言いそうになったけど、黙って瑠禾の話を聞いていた



「起きてから、堅司がメガネを外した顔を思いだそうと思ったら…見た事なかった…」



私は…堅司さんのメガネしてない顔…見てる…何度も…

瑠禾は…見た事ないんだ…

そう思うとなんだか嬉しくなって思わず笑ってしまった



「ねぇ、さとやんのメガネがどうとかって聞こえたけど…」

「うん。櫂は見たことある?堅司のメガネなしの顔…」



瑠禾の問いかけに、櫂が頭を捻る



「…ない…かも…」



ハッとした顔の櫂に、瑠禾はなぜか隣で頷いている



「これは…重要な案件!」

「ホシは、どうしてメガネなしの顔を誰にも見せたくないのか!」

『ちょ、二人とも…』



事件だ!重要だ!と言いながら二人は練習室をところ狭しと歩きまわる



「お前ら、煩えんだよ!」



歌詞を考えていた雅楽が怒鳴る



「ガッくん!さとやんのメガネなしの顔見たことある?」

「あぁ?佐藤の…?」



瑠禾と櫂の真剣な表情にさすがの雅楽も真面目に思い出そうとしている



「…ない!…アイツのメガネは顔から外れねぇからな」

「マジで!」

「堅司…そんな秘密を持っていたとは…」

『そんなわけないでしょ!もう、みんなふざけないでよ…』

「どうにかして、堅司のメガネ取ろう」

「いいな!」

「作戦考えないと…」



私の話なんて誰も聞いてなくて、悲しくなってきた



『もう…』



こうなると、誰にも止められなくなる…

そう、一人を除いて…

でも、その頼みの綱はこの場には居なくて…



『…龍…堅司さ〜ん…』



涙目になってドアの側にしゃがみ込み、三人の止められない暴走話を聞いていた

堅司さんのメガネなし…

みんな見てると思ったんだけどな…



「おっつかれ〜い!」



今日、ここに来る予定のなかった人の声を聞いて驚きと共に嬉しさが込み上げてきて



『け、堅司さ…?』

「おう!美花、どないしたんや?」



上から覗き込まれた瞬間、ポロリと涙が零れ落ちた

堅司さんの顔色がみるみる変わっていく



『あ、ごめんなさい…これは、違うの…』

「何がちゃうんや?」



眉間に深いシワを寄せた堅司さんの顔は、ドンドン険しくなっていって…



「誰や!美花を困らせたんは!!」



鬼の形相で三人を睨みつける堅司さん…



『ちょ、ちょっと…堅司さん?』

「誰や!!」



凄みを利かせる堅司さんに三人は萎縮して黙ってしまう



『違うの…勝手に涙が出てきたの…会えると思わなかったから…』



ん?と、私の顔を見るなり頬を赤く染める



「…会えて…嬉しかった…んか?」



コクンと頷くと、赤く染めていた顔は笑顔へと変わり…



「ああああああああ!俺もめっちゃ会いたかったでぇ♪」



あっという間に彼の腕の中に抱き寄せられて、私の全てが堅司さんの匂いに包まれた



「あ〜あ、どっか別でやれよ…」

「ガッくん!やるなんて破廉恥な言葉、どこで覚えてきたの!」

「母さん、雅楽だって大人なんだから…」

「こんな奴に育てられてねーよ!だいたい、瑠禾は誰なんだよ…」

「雅楽のお父さん」



三人のやり取りを聞いて、私たちはハッとして離れた

顔を上げる事が出来ない…


恥ずかしいよぉ〜…



「あ、堅司!ここに何かついてる」



そう言って瑠禾が自分の目尻を指差す

ふと顔を上げると、堅司さんはメガネの下から指を突っ込み目尻をゴシゴシと擦っている



「そこじゃない!もっとこっち!」

「どこや!取れたか?」



何度も瑠禾に確認するけど、瑠禾は中々首を縦に振らない

私はさっきまでの三人のやり取りを思い出し、これが瑠禾の作戦なんだと気がついた


視界の端では櫂が私に向かってウィンクをしている


やっぱり…


堅司さんに声をかけようとして、それを阻止される



「さとやん、メガネ外したら?」



櫂の言葉に、ああそうかと意外にもあっさりと堅司さんはメガネを外すと三人の表情がみるみる変わる



「…うわぁ…さとやんて、美形だったんだ…俺、自信なくす…」



ガックリとうなだれる櫂…



「マジで…佐藤か…?」



雅楽の口は開いたままで…



「……………」



なぜか瑠禾は、黙ったまま堅司さんを見つめている



『…瑠…禾…?』



気になり声をかけようとした時、彼は堅司さんに歩み寄った

そして徐に両肩を握り顔を近づけると、暫く瞬きも忘れて堅司さんの顔をジーッと見てる



「…?…なんや、瑠禾…ゴミは取れたか?」



首を傾げる堅司さんに益々顔を近づけ、頬をポッと赤くしたかと思うと、ギュッと首に腕を絡ませ抱きついた



「…堅司…綺麗…」

「な、な、な…何やってんだよ、瑠禾!」

「ちょ…ルカちん、美花ちゃんの前なんだから離れなさい!」



雅楽と櫂が二人の間に入り、剥がそうとするけど瑠禾は堅司さんにしがみついていて…

私も堅司さんもその状況をまだ飲み込めずに、ボー然としていた


わかるんだけどね…

瑠禾ってきれいなものとか大好きだし
堅司さんのメガネなしの顔は本当に綺麗だし

でも、本質っていうのかな…

瑠禾にはそれを見抜く力みたいなのがあって、そのセンサーが働いたんだろうなって…



「美花って凄い…」

『…?…どうして?』

「俺も気づかなかった堅司の魅力に一番に気がついた」



堅司さんの顔が綺麗だから好きになったんじゃないんだけど、何となくそう言われた事が嬉しくて顔がほころぶ

後になって堅司さんが事の真相を知り、瑠禾の言動にも納得をしたけれど…















瑠禾はこの先、事あるごとに堅司さんのメガネを外そうとしていた



「さとやん、コンタクトにしたら…?」

「一々、めんどくせぇだろ…瑠禾が纏わり付いて…」



櫂と雅楽の申し出に



「俺がコンタクトにしたら、世の中のお姉ちゃんが俺をほっとかんからなー」



何となくムッとしてしまって、堅司さんを見ないようにしていると



「嘘やで?美花…俺が素顔を見せるんは、お前にだけや…」



私だけに聞こえるように囁かれた言葉はとても優しくて、甘くて

私だけしか知らない彼の姿を思い出させる






貴方の魅力は

誰よりも知ってる…












Special Thanks*関西弁監修 かや様
title: 静夜のワルツ様

‐end‐

2011.05.05

※龍贔屓の皆様※
龍だけ出演していないのは、場を纏めたくなかったからです
ご了承くださいませ…

管理人は堅司スチルの水を飲んでるやつが好きだす(*^□^*)
メガネ有りも好きですが、堅司って美形だよねー♪


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