MUSICIAN | ナノ





貴方の背中






まだ貴方と付き合う前…



私がトロイメライのボーカルに成り立ての頃は、バイクに乗せてくれていたのに

彼自身もどのくらいバイクに跨がってないんだろう…



一度、事故を起こしかけて…

それから、私を後ろに乗せてくれる事はなくなった




いろいろあって貴方を好きになり付き合うようになったけど…

移動はずっと車…

でも私は知ってる

たまの休みになると、バイクを磨いてエンジンをかけている

ただ…

乗らない…

貴方の背中に顔を埋めて、体を密着させて…

風を感じるの…好きなんだけど…





『龍…もう、バイクには乗せてくれないの?』

「…!!」



仕事帰りの龍の運転する車の助手席で唐突に尋ねた

びっくりして、動揺しているのがわかる




『ご、ごめん…今は運転に集中して…』



私っていつもタイミングが悪い

龍が車を路肩に止めた

ハンドルを握ったまま顔を埋めて、暫くすると顔だけをこちらに向けた



『…龍…?ごめんなさ…』

「バイク…乗りたいのか?」



眉間にシワを寄せて、悲しそうな顔…



『…そんな、悲しそうな顔しないで…。私…』



思わず、彼の腕に触れると

彼の手が私の頬を触り…



「…俺が、乗りたいのを我慢してるって…わかったのか?」



やっぱり…我慢…してたんだ

首を横に振り



『…ううん…私が…乗りたくて…』

「あんなに怖い思いをしたのにか?」



龍は私の事を思ってバイクに乗らないんだと確信した

少しだけ感じていた龍の違和感…

ホントはバイクが好きなのに

自分の事を抑えてまで私の事を考えてくれて…



『…確かに…あの時は怖かった。でも、龍を信じてるから…怖くないよ…』



私の頬に触れていた手がそのまま私の体を抱きしめ、気がつくと龍の肩に引き寄せられている



『…龍…貴方が感じている風を…私も感じたいの…』

「無理…してないか?俺のために…」



もう一度、首を横に振り



『してないよ。…ホントに、龍のバイクに乗りたいの…』



貴方の背中で…

貴方と同じものを…

感じたい…
















次のオフ

私は龍の背中に捕まり、龍と同じ風を感じていた

スピードは…私が怖がらないようにあまり出していない

それでも、貴方の背中は…

嬉しそう

信号で止まる度に、龍のお腹に回している私の手を確認し触る



「…寒くないか?」

「…怖くないか?」



私を何度も確認する



『うん!大丈夫…』



私の言葉を聞くと

安心したように微笑み、バイクを走らせる












歌を歌う時、貴方が私の前に来る事はない…

いつも背中で貴方を感じて歌う



「オマエを背中で感じるのも…いいな…」



ふと、龍が漏らした言葉…



「オマエに抱きしめられているみたいだ…」

『私はいつも歌っている時…龍に抱きしめられているみたいだよ…』



私の言葉に龍の頬が赤くなる

でもすぐにそれは笑顔に変わり…



「気持ちはいつも、後ろから抱きしめてるよ…」











いつも龍に抱きしめられている…

でも、バイクに乗った時は

私が龍を背中から抱きしめるよ…















-end-

2009.12.21


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