DARLING | ナノ





Princess






コンコン





「入っていいか?」

『…春…。どうぞ…って言いたいけど、この部屋酷いよね…』

「手伝うよ…」



結婚が決まり、引っ越しの準備をする美花の手伝いに来た

弟の真くんが部屋に案内してくれて…

彼女の部屋に入る



「生まれてからずっとここで?」



コクンと頷く君の横顔は、なんだか寂しそうで…

黙ったまま彼女に近づき、そっと髪に触れた

ハッとした美花が笑顔を向け



『ご、ごめんなさい…。これ、お願いしてもいいかな…?』



段ボールを渡されて

近くに積み上げていた本を詰めていく

黙々と進む作業…

何も話さない美花

彼女が気になり、そっとそちらを振り向く

心なしか彼女の肩が震えている事に気がついた



泣いている…?



そう思った俺は、美花に近づき

彼女の細い腰を引き寄せ肩に顎を乗せた



「どうした…?」



少しだけこちらを向いた彼女が俺に見せたもの…

クレヨンで描かれた女の子の絵だった



『私の小さい頃の…夢…。忘れてた…』

「…美花の夢…?…夢は何だった?」

『…お姫様…。女の子は誰もが一度は思い描く夢を私も持っていたのね…』



女の子の頭には冠

そして、ドレス姿…

懐かしそうにその絵を見つめる美花の目はキラキラしている



「よかった。…ここを離れたくなくて、泣いてるのかと思った…」



そう言って彼女の髪にキスを落とす

少し頬を染めた彼女の耳たぶに触れると、そこまでもが赤くなる



『は、春…』

「フッ…、そろそろ片付けを始めないとな?」



優しく微笑めば、頬も耳も赤くしたまま、そうね…と微笑む



女の子は誰もが一度はお姫様に憧れる…



そう言えば、未来もそうだったなと思い出し、二人が同じ夢を見ていた事に何故か嬉しくなった



そして、その願いを叶えてあげたいと思う















与えてもらう事ばかりだった俺が君に出逢って、人に与えたいと初めて思った



美花…

君の頭上からたくさんのHAPPYを降らせるよ

君を笑顔で一杯にしたいから…













式当日…

彼女の頭上にティアラを飾る

俺だけのPrincessに…

俺からのサプライズ…

少し涙を浮かべて

でも、極上の微笑みを俺に向けて

嬉しい…

本物のお姫様になれた…と、囁く

君が望むなら、いつでもPrincessにしてあげる

その役目は永遠に俺のものだから…














部屋の一角に、彼女の描いた女の子がいる

ドレスを着て、頭には冠を乗せて…

隣のフォトフレームには、美花がドレスを着て

ティアラを乗せて…俺の隣で微笑んでいる

俺の…愛しいPrincess…
















-end-

2010.06.29


Daybreak 華帆様に捧げます

HAPPY BIRTHDAY TO 華帆



*幸

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