DARLING | ナノ





こっとを向いてほしくて






「ねぇ、ミィ…俺、どうしたらいい?」



ミャー



飼い猫ミィに問いかけても答えはミャーだよな…


もう一度シーツに包まり、目を閉じる

夢の中で君が俺に発した二文字の言葉が真っ暗な頭の中で木霊する



『好きです…夏輝さんの事が…』



今日も一緒に仕事をする事になっているのに、どんな顔して彼女に会えばいいんだ…

…って

夢の中の話だけど、俺は間違いなく意識してしまう



「ミィ!俺、どうしたらいいんだよ!!」



急に顔を出して叫ぶと、俺の声に驚いたミィはベッドから飛び出して部屋から出て行ってしまった

枕に顔を埋めて昨日までどんな風に彼女と接していたのかを考える…



何をどう考えてもわからず、結局家を出る時間になってしまった



「何やってんだよ…俺…」



寝不足の目を隠す為にサングラスをかける

なんか…俺らしくない…

分かっていても素の顔を曝す勇気もなくて、そのまま家を出た



ずっと、考えないようにしてきた…

だから夢の中とはいえ、彼女からの告白にマジで参っている

ホントは彼女が俺の事をどんな風に考えているのかはわからない

だけど…

俺自身は、自分の答えを知ってしまった

自覚した途端、どう接していいのか分からなくなった

どんな顔をしていいのかも…
















彼女の夢を見てからというもの、何故か俺は彼女を避けている

楽屋に挨拶に来てもipodを聞きながら作曲をしたり、詩を書いていたりして、話しかけられまいとしている

歌収録で一緒になる日も屋上に行き、タバコをふかして時間を潰す

彼女が来る事はない場所だから…



「夏輝…あからさまに避けているが…?」

「おかしいだろ?…どう接していいか分かんないんだよ…。どんな顔をしていいのか、どんな態度をとっていいのか、どんな話をすればいいのか…」



笑われるのを覚悟で、胸の内を話した…



「そのままでいいだろう…何も飾る必要はない。不器用でも何でも、そのままの夏輝で話をすればいいし、接すればいい。話が出来なければ…何も話さず、隣にいればいいんだ…」

「春…」

「彼女が今、どんな顔をしてお前を見ているのか、知らないだろう…



確かに…

俺はまともに彼女の顔を見ていない



「ど、どんな顔してるんだ…」

「自分で確かめろ…。今、丁度リハをやっているから」



春の言葉を最後まで聞かずに、リハ中のスタジオに走る

自分の事で一杯一杯になってしまって、彼女が今どんな状態なのか

まるで考えていなかった











リハ中のスタジオをそっと開ける

丁度、彼女が新曲を歌っていた

おかしい…

こんなに声の伸びがなかったか…?

こんな風に笑ってたか…?

こんなに自信なさ気に歌う子だったか…?



そんな中、彼女のリハが終了した

あまりの出来の悪さにマネージャーに叱られている

シュンと肩を落としてマネージャーの後に続き、楽屋へと戻って行く彼女に声をかけられなかった



――春…

お前の言葉が正しければ、俺は自惚れていいのか…

彼女のこの状態は…

俺のせいなのか…?

















彼女の楽屋へと足を運び、一つ息を吐くとドアをノックした

ドアの隙間から覗かせた彼女の目は潤んでいて…

俺の心臓がドクンと音を立てる



『…夏…輝さ…』

「今、ちょっといいかな…?」



遠慮がちに開けられたドアが閉まる前に、俺は彼女を…

美花ちゃんを背中から抱きしめた



『…っ!な、夏輝さん…?』

「ねぇ…俺の話を聞いて?」



美花ちゃんの耳に自分の唇を押し付けて



「…ごめん…」



そっと囁いた



『…ど、どうして夏輝さんが謝るんですか…?』

「自惚れかもしれないけど…今、美花ちゃんが本来の力を発揮できないのは…俺のせい…?」

『………』



何も答える事の出来ない彼女の肩が僅かに震える

俺の手にそっと触れると



『…プロとして失格ですよね…。すみません…夏輝さんに心配かけて…』

「…こっち…向いて…?」



俺の手に雫がポタリと落ちる



「…美花ちゃん…」

『…私の事…嫌いですか…?』

「ちがっ!…意識しちゃって…」

『えっ?』



こっちを向いてほしくて…

正夢ではなく、逆夢にする



「好きだよ…美花ちゃんの事が…」



見た夢とは少し違うけど、これが現実



「キスしたいから…こっち向いて…?」













-end-

title: 星空ロマンチカ様

2011.01.08


遅くなりましたが

Chocolat☆Laboratory ななこ様に捧げます

HAPPY BIRTHDAY ななこ\(^O^)/

メチャクチャ遅れてごめん…(T^T)




*幸

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