DARLING | ナノ





そんなベタなこと

※設定をGREE配信シナリオにしています。ご了承ください。













「じゃあ、明日だがちゃんと一人で行けるな?」

『はい!お疲れ様でした』



山田さんの車から降りてペコッと頭を下げる

走り去る車を見送ってエントランスに向かった


今日も疲れたぁ…


ふぅっと溜め息をつき、エレベーターのボタンを押す

鞄の中から点滅する携帯を取り出すと、メールが来ていた


あ…


それは、同じマンションに住む京介くんからのメールで…










送信:K,N
SUB :無題


お疲れ様
今マンションに帰り着いた

電気点いてないって事は
まだ帰って来てないよね?

帰ったら何時でもいいから
メールちょうだい♪




きょうすけ



















送信時間を見ると…

ほんの数分前

すぐに返事を打とうとした時、エレベーターが目的の階に止まり、ドアがサッと開く

メールを打ちながら部屋に向かって歩いていると



「…!」

『…すみません…』



携帯に夢中になっていたせいで、誰かとぶつかってしまって、ペこりとお辞儀をすると、頭上でクスッと笑う声が聞こえた



「おかえり…美花ちゃん…」



見上げるとメールの相手で、付き合いはじめたばかりの…

Waveの中西京介くん



『…あ…ただいま…』



いきなり目の前に現れたその人物に驚いていると、自然に私は京介くんの腕の中にスッポリと収まっていた



「携帯に夢中になってたんだ?」



図星を指された事と、今の自分の状況を考えて顔が熱くなる



「実は、帰ってきたの見えたからすぐにメール打った」

『え…あの…』



私の言葉を遮ったのは、1Fに向かって動き出したエレベーター

この状況を他の人に見られてしまうのはマズイと思った私たちは、急いで私の部屋に入った

付き合う前、何度も京介くんはこの部屋に訪れているのに…

別々の仕事が忙しくなり、思わぬすれ違い生活をしていたせいか、あまりの久しぶりさに心臓がドキドキと主張をする

でも、その緊張も自分自身のせいで台なしにしてしまう


グゥ〜…


緊張感のかけらもない音が玄関に響き…

案の定、京介くんに笑われてしまう


あぁ…恥ずかしい…



「仕事を頑張ってきたって事でしょ?お腹が空くのは…」



色気のない音を聞いたにも関わらず、優しい言葉をかけてくれる京介くんに申し訳ない気持ちになっていると



「第一印象はジャージだったし、いいんじゃない?」



忘れてほしい事を覚えている事に、また気持ちが落ち込んでいく



『ひど〜い…』



唇を尖らせてもう言った私の頬を人差し指でツンと突く



「ねぇ、俺も腹減ってんだけど…何か食べに行く?…それとも…」



意味深な彼の視線に珍しくピンときた私は



『良かったら、何か作るよ?』

「やった♪」

























「ごちそー様でした!」

『おそまつ様でした』



短時間で作れる物を一気に作って、量がすごく不安だったけど…

京介くんはキレイにたいらげてくれた


味とかどうだったかな…


内心ドキドキしながら、聞いてみたいような聞きたくないような…



「そんなに見つめられたら、どうしていいかわかんないよ?」

『そ、そんなに見てな…』



いや…見てたかも…


食後に淹れたお茶を飲みながら、こんな時間もいいかも…

なんて思ったりしている自分がいる



「美味しかったよ♪」



急に言われた言葉に驚いて彼を見れば、何もなかったようにお茶を飲んでいた



『…あ、ありがと…』



消え入りそうな声で答えると



「いいね、こんな風に一緒に食事するの…。外食するのとは違ってやっぱいいよ♪」



京介くんの見たこともない笑顔に私も釣られて笑みがこぼれる

こんな表情見ちゃうと、普通の男の子だ…

親近感湧いちゃう



「ねぇ?お願いを聞いてほしいんだけど…」

『…?』



お願いと聞いて、ドキドキしたけど…



「ここに、俺用の食器置いて?」

『食器…?』



ダメ?と頭を傾げた彼は、いつもの京介くんの顔をしていて…

さっきまでの少年のような表情ではなく、余裕でクスクスと笑って私の様子を伺っている



『お茶碗とお箸とか?』

「うん♪」



また、子供みたいな顔…

そんなに一度にたくさんの表情を見せられたら…



『うん、いいよ♪今度、買っておくね?』



そう答えるしかない…

全然、断る気もないけど



「ついでに美花ちゃんのも!お揃いがいいな、俺!」

『え?』

「…夫婦茶碗…」



甘い声で囁かれたのと、【夫婦】という言葉に反応して、顔から火が出そうになる



「時間見つけて、またご飯食べさせてよ…美花ちゃんの…また…食いたい…」



気づけば、すぐそばにある彼の顔…



『わ、わかった…お揃いの…夫婦茶碗…ね?』

「そう!お揃いの箸もね?」



無邪気な少年のような顔と、クールな大人の顔を使い分けて私を翻弄する彼は…



『…ずるい…』

「ん?」

『あ…ごめん。何でもない…』



思わず声に出てしまった言葉をごまかす



「そ?」



あまり気にしてないのか、サラッと流されてホッとしたところに



「もう一つ、お願い聞いて欲しいんだけど…」

『な、何?』



私の持っていた湯呑みを取り上げ、テーブルに置くと



『え?』



ゴロンと横になり、私の膝に頭を乗せてしまった

下から見上げられ



「嫌だった?」



捨てられた子犬のような顔になり、また違う表情を見せる



『…大丈夫、嫌じゃないよ…?』



なんだか愛おしくなり、彼の柔らかい髪にそっと触れた

潤んだ瞳で見つめられ



「俺らしくないとか思ってる?」



ちょっと不安そうな表情に笑いかけ



『思ってないよ…京介くんのいろんな表情が見られて嬉しいなって…』



その言葉に



「美花ちゃんを好きになって良かった…ありのままの俺をずっと好きでいてよ…」



うん、と頷くと彼の大きな掌に後頭部を包み込まれて吸い込まれるように唇を重ねた


恋人たちの時間は、ありのままの自分を受け入れてもらい、ありのままの彼を受け入れる…

芸能人だけど…

ベタでもいいよね…?












‐end‐

title: 10mm 様

2011.04.07



同じ誕生日、運命の人

Liberty!のみずき様に捧げます

遅くなって
しかも、こんなですみませ…

みずき様のみお持ち帰り可です




*幸

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