DARLING | ナノ





hands






パタパタ

カチャッ…



『京介く…!!』



病室のドアを開けると、足にギブスを巻いた京介くんが眠っていた

そっとドアを閉めて、ベットの横の椅子に腰掛けた

スヤスヤと眠っている京介くんの顔を覗き込む



――よかった…よく眠ってる…



連絡を貰ったのが夕方…

今、Waveは来月から始まる全国ツアーに向けてのリハーサルの毎日を送っている

そんな中、京介くんがリハーサル中にケガをしたという情報が入ってきた

翔くんや一磨くんから留守電やメールが入っていたし、山田さんまでもが情報を集めてくれた

私の仕事が終わったのが深夜だったのに、みんなのおかげで私は京介くんの病室に入る事ができた






痛々しい左足のギブス…

今回、ダンスだけでなくアクロバットを取り入れた演出を試みていたという…

幸いケガは足の骨折だけ…

体を休めるいい機会だからと、入院したんだって…

ここに来て彼の顔を見るまでは安心できなかったけど、ちょっとだけホッとした

夢を見ているのか、時々眉間にクッと力が入ってる

私は思わず京介くんの手を握った

そしていつの間にか…眠ってしまっていた…




















ふと夜中に目を覚ますと、知らない天井に戸惑った



――あれ…ここは…



少しずつ記憶を辿り自分が病院にいる事を思い出す



――そっか…俺は怪我をして…ん?



その時、右手に違和感を覚えた

そこにはかわいい寝息をたて、俺の右手をしっかりと握っている美花ちゃんの姿が…



――忙しいのに来てくれて…疲れて寝ちゃったんだ…



彼女の姿を目の当たりにして、胸の奥から込み上げてくるものがあった

体を少し傾けて彼女の頭を左手で撫でた



『う…ん…』

「ごめん…起こしたね…」





















いつの間にか夢の中にいた私…

頭に触れた心地よい感触を感じつつ、目を覚ますと…



「ごめん…起こしたね…?」

『あ…京介くん…足は?まだ痛い…?』



私はチラッと彼の足を見た…

京介くんは自分の体を起こすと



「足は大丈夫だよ…痛み止めも効いているからね…だけど、ここが痛い…」



そう言いながら胸を押さえている



『えっ?怪我したとき打ったのかな?看護士さん呼ばないと…あっ!』



私がナースコールしようとしたその手を京介くんに握られる



「美花ちゃんに…カッコ悪いとこ…見せちゃった…」



そう言った彼の不安そうな顔に不謹慎にもドキドキしちゃって…



「ごめんね…こんなカッコ悪い彼氏で…」



そう言うと京介くんは、自分の頭を私の肩にポンッと乗せた

こんな弱気な彼は見た事がない…

彼は器用で何でもできてしまうから…

私はベッドに腰掛け京介くんの頭をそっと抱き寄せた

京介くんが愛しくて…愛しくて…



「美花ちゃんの心臓の音が…落ち着く…」



彼はそう言うと私の腰に腕をまわし、私を抱きしめた












どのくらいの時間そうしていたんだろう…

京介くんは顔を上げると



「ありがとう…美花ちゃんは不思議だな…」

『京介…くん…?』

「こんなに俺の弱いとこ見せたのって…初めてだ…嫌いになった?」



ホントに…こんな京介くん…初めてだ…

だけど…



『嫌いになんて…ならないよ…。寧ろ、もっと…好き…』



私の言葉に少しはにかむような照れ笑いを浮かべる



『嬉しいの…いつもは私が甘えてばかりだから…新しい京介くんに会えたみたいで…』

「美花ちゃん…」



私は京介くんに微笑んだ…

そして…初めて…

自分から唇を重ねた

唇が触れた時、京介くんの体が僅かにピクリと反応して…唇が離れた

わかっている…
付き合い始めた時、女の子からのキスは受け入れないと約束したから…

だけど…今日だけは、私からしてあげたかったから…

京介くんの頬を両手で包み込んで、もう一度キスをした

そんな私の気持ちが通じたのか、京介くんが受け入れてくれたのがわかった












ゆっくりと唇が離れると



「クスッ…たまには美花ちゃんからのキスもいいね…」



さっきまでとは違う…

いつもの京介くんだ



「ありがとう、美花ちゃん!俺さ、今まで結構何でもできて、仕事の挫折も初めてで…思ったより…おちてたんだね。だけど、君がいてくれて…俺の弱い部分見ても温かく包んでくれて…感謝してるよ」



彼の頬を包んでいた両手の上からそっと手を重ねられる



「美花ちゃん、覚悟して…俺…君のこの手を離すつもりはないから…」



私は重ねられたその手を握り



『私も…離さないよ……』



――いつまでも…絶対に…














-end-

2009.02.18


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