DARLING | ナノ





Last Kiss







『ねぇ…お願いがあるの…』



教会の扉の向こうには私たちを祝ってくれる人たちが待っている

先にその中に入場しようとした彼に声をかけた



「え…?」



困ってる…

ごめんなさい…貴方を困らせて…

だけど…

教会の中にはあの人が…居るから…

















『もう…京介くんとの事は…終わりにしたいの…』



私から口にした最後の言葉

彼はそう言われる事をわかっていたように、ただ黙って聞いていた

反論するわけでもなく…

出て行くでもなく…



『…も…疲れちゃった…よ…』



信じたいのに…

何を信じればいいのかさえもわからなくなって…不安にもなって…

大好きなのに…

会えば不満ばかりをぶつけて

そんな自分さえ嫌になる



「…ごめんね…今までありがとう…」



最後の台詞を口にしたすぐ後…

触れるだけのキスをされた

彼を本当に好きだった…

触れるだけでアツくなった

触れられて…肌が震えた

京介くんの聞いた事のない声が私の心を溶かした

何もかもが初めてで…

私の初めての恋は…終わった

黙って出て行く彼を悪者にして…

愛しくてずっとずっと

側にいたいのに…

私がそれをできなくて…

ごめんなさい…京介くん…
















彼との思い出の品を全て捨てて

アドレスも消した

もう私の中に彼は残ってないはず

なのに…

どうしてもぬぐい去れない記憶がここにだけ残っている

くちびるにだけ

貴方のぬくもりが…

どんなに忘れようとしても

最後の触れるだけのキスの感触が忘れられない

仕事でもキスをした

新しい恋もして、恋人ともキスをした

もう、何年も経っているのに

私の唇は彼を忘れていない















私の夢は…

アイドルになる事じゃなくて

ただ、好きな人と一緒に幸せになる事だった

相手が京介くんだったらって…

何度も何度も考えて

気が狂いそうになった

自分から手を離したのに

手の中から居なくなると二度と自分のモノにはならないその存在が私の中で大きく主張を始める

結局、私は自分を優先してしまう

言い訳もしなかった京介くん

別れたくないと懇願しなかった京介くん

私が思っていた以上に彼は私を必要としていなかったのかもしれない

そんな事実が私の心を締め付けた

ただ…

私は楽になりたかっただけだった

そして…

私は自分に伸ばされた翔くんの手にすがってしまった…

もう、京介くんとは別れていたけれど…

そんな私と翔くんをどんな気持ちで見ていたんだろう…

忘れる事が出来たのか、そうでなかったのか…

曖昧な心は宙ブラリのまま

翔くんの私に向けてくれる笑顔と優しさに私は…甘えた…
















「桐谷翔を夫とし…」

『…はい、誓います…』



これは…撮影でも何でもない…

私と翔くんの結婚式…



「誓いのキスを…」



翔くんがヴェールを上げて、頬を赤くして私に近づいて来る

そっと目を閉じて彼の唇を待つ


















『…翔くん、お願いがあるの…。誓いのキスは…唇にしてくれる?』

「…え…?」



打ち合わせでは頬にする事になっていた

テレビカメラが入る事になっていた事もあって私たちはファンを刺激しないためと両事務所から言われていた

それを…

私は…今日から翔くんと生きていく

彼の目の前で翔くんとキスすることに意味があるんだと思った

決別するために…

貴方のぬくもりを…忘れるために…

翔くんの優しい唇を受け止める




さよなら…京介くん…

大好きだったよ…




もう、彼のぬくもりは私の唇には残ってない…













-end-

Inspiration:ラストキッス

2011.10.27

なんかイミフですみません
ちょっと原曲とは解釈が違いますが…
京介贔屓の皆様、すみませ…

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