DARLING | ナノ





桜の饗宴-予感-





お花見の当日は少し肌寒くまだ冬の名残があった

喉を痛めないように…

風邪をひかないように…

かなり着込んでお花見に参加した






お花見に参加していたのは、JADEのメンバーとスタッフさん達



「飲んでない…。そっか、未成年。…少し待って…」



そう言って持ってきてくれたのは、ホットココア



――あったかい…



『あ、ありがとうございます』



私は神堂さんにお礼を言ってココアを一口含んだ

私の神堂さんの印象…

…無口…

だからなのか、私をプロデュースしてくれるのは嬉しいんだけど、未だにどう接していいのかわからない



「俺が―…怖い…?」

『えっ?…いえ、あの…』



咄嗟の答えも出てこない



「春!」



その時、神堂さんが冬馬さんに呼ばれた



「じゃ、君も楽しんで…」

『…はい…』



――言えなかったよ…怖くないって…



一人で落ち込んでいると、夏輝さんに肩を叩かれた



「ココア?」

『はい。神堂さんにいただいたんです』

「そっか♪俺達の歌姫に風邪ひかれたら困るからね?」



私は次のシングルでJADEとのコラボが決まっていた

このお花見もそのプロジェクトチームの懇親会みたいなもので…



『あの…聞いてもいいですか?』



私は思いきって夏輝さんに問い掛けた



『私…神堂さんを怖がっているように見えますか?』



アルコールを口に含もうとしていた夏輝さんの手が止まる



「美花ちゃん?…春が怖いの…?」



夏輝さんの問い掛けに、私は首を振った



『怖くないって伝える前に、冬馬さんに呼ばれて行ってしまいました…』



思わず俯いたまま答えてしまった



――なんだか…駄々をこねた子供みたいだよね…



そんな事を考えてしまって、益々顔を上げる事が出来なくなってしまう



「そうか…やっぱり君も…」



夏輝さんはそこまで言うと、黙ってしまった

不思議に思い顔を上げると、口元に手を当て、肩を震わせ笑っている



『夏…輝…さん?』

「ごめん。…君たち、春と美花ちゃん…。よく、似てるよ…」



――私と神堂さんが…似てる?



『似て…ますか?』



神堂さんはJADEのボーカルで、作詞も作曲もできて、すごい人で…

そんな神堂さんと私が…似てる…?



「相手にうまく自分を伝えられない所とか?春ほどではないけど、美花ちゃんもでしょ?」



ドキッとしてしまった

この世界に入って引っ込み思案はダメだと思い、そんな自分を隠してきたつもりだった



「…これは、俺の意見じゃなくて春が言ってたんだ」

『神堂さんが…?』



夏輝さんは私の事よく見てるって思ったのに…

それは神堂さんの言葉だった



「うん。…流石に春は君の事よく見えてるよ」



夏輝さんの言葉は私を惑わすには十分で、顔がみるみる赤くなるのを感じていた



「あ…美花ちゃん、ごめんね。もう少し相手をしてあげたいんだけど、ちょっと呼ばれたから…」

『いえ。私の事はお気遣いなく、どうぞ行ってください』



私がそう言うと、夏輝さんはスタッフさんの所に行ってしまった

神堂さんが持ってきてくれたココアを飲む



――あ…冷えてる



せっかく体が冷えないようにと持ってきてくれたのに…

私は冷えたココアを飲み干し、簡易のドリンクコーナーへと向かった






その時、ポツポツと落ちてきた雨に気づく

一斉に荷物や食べ物、料理なんかを片付け始める

私も手伝わなくちゃと思い、近くの荷物を纏めたりしていると…

そのうち雨が本格的に降り出してきた

私は持っていたストールを頭から被り、雨を凌ぎながら残った荷物を持ち、ビルに向かって走っていると…

いきなりピカッと閃光が走った



『きゃあああああああああ』




光るとすぐに音が来ると思ってしまい、耳を押さえてビルに着く前にしゃがみ込んでしまった

手の震えが止まらない

そして…

足までもが竦んでしまって動かない…



――どうしよう…



そう思った時、頭からレザージャケットを被せられ



「荷物貸して!!」



叫び声と共に、荷物を取られると肩を抱かれビルに飛び込んだ

体の震えはまだ止まらない



「春!美花ちゃん!!」



――春…?え…春って…



私が驚いて顔をあげると、スタッフさんからタオルを受け取り自慢の赤い髪からポタポタと滴を垂らした神堂さんが目に入る



『し、神ど…』

「おい!ボーカル二人がずぶ濡れって!…風邪ひいたらどうするんだ!!」



冬馬さんの激しい言葉…

私はなんて事をしたんだろうと思い、神堂さんに声をかけられないまま…

俯いてしまった…

すると、頭にかけられていたレザージャケットが取られ、代わりにタオルがかけられた



「これで拭いて…」



とっても優しい神堂さんの声…



『…すみません。私、咄嗟の事で…。冬馬さん、ごめんなさい!私が風邪をひいたらなんて、さっきは完全に忘れてました。………叱ってくれてありがとうございます…』



私が冬馬さんに頭を下げると、冬馬さんが驚いた顔をしていた



「…悪い…。怒鳴るつもりは…」

『いえ…。私の自覚が足らなかったんです。折角、風邪をひかないようにあったかい格好をしても、所詮ポーズだったんです。改めて自覚し直そうと思います。』



私は神堂さんに向き直ると



『それから…神堂さん!私、神堂さんの事を怖いなんて思ってないですよ…』



そう言ってにっこり笑った時、神堂さんのレザージャケットから数枚の桜の花びらがヒラヒラと落ちた



「フッ…君についていた花びらがついてきたな…」



そう言った神堂さんの笑顔が忘れられず

いつまでも、いつまでも私の心の中に残っている




私は桜の魔法にかかったのだ

そう…、これが恋だと気がつくのに時間はかからない…


















-end-

2009.04.09


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