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桜の饗宴-予感-





4月某日



私は仕事で京都に1泊することになった

この桜の季節に京都に来れるなんて…

私はホントについている

そんな時、スタッフの1人が



「せっかく京都に来たんだから、お花見しませんか?」



という提案をしてきた



「せやったら、いい穴場…知ってんで」



一緒に仕事にきていた宇治抹茶さんだった



「手配…しよか?任しとき」



そう言うと、松田さんは携帯でどこかに電話をかけた



「美花ちゃん、京都の桜見た事ある?」

『いえ、修学旅行で京都に来た事はありますが…残念ながら、桜の季節ではなかったので…』

「ほーか?…まっ、隆やんに任しといたら大丈夫や!!」



慎之介さんは、屈託のない顔で私に笑ってくれた



『京都の桜…楽しみです♪』



私がそう言って微笑んだ時…



「ばっちり!今年の桜はまた特にいいみたいや…」



電話を終えた松田さんの言葉に心が躍っていた

















ロケバスやタクシーで松田さんの指定した場所に到着した



『ここは…』



到着したのは…とある高校だった



「懐かしいなぁ…此処ならバッチリやな。さすがは隆やん!」



慎之介さんにそう言われて、松田さんは嬉しそうだった



「ちょっと、挨拶してくるわ。慎、場所は…あっこや…」

「皆を案内したら、俺も挨拶に行くわ…」



二人のやり取りの後、慎之介さんに案内された場所に行く

















場所は、体育館の横だった



『うわぁ…』



見事なまでの1本桜…

そのバックには遠くに見える清水寺のライトアップ…



『………すご…』



ため息しか出なかった

私が桜をボーッと見ている間に、慎之介さんはお花見の準備を着々と進めている



「どないした?…桜に見とれた?」



後ろからの声に驚くと…



『あ、松田さん…。すごいですね…この光景…』



私の言葉に松田さんが微笑む



「ここは…俺と慎の母校や…。見事やろ?…この桜…」

『はい…。松田さん、ありがとうございます』

「いや…俺やのうて慎に任せても、たぶんここに来たんちゃう?」



松田さんはそう言うと、そのまま慎之介さんの元へと行ってしまった



――なんだか二人の絆に妬けちゃうな…



そう思った自分にびっくりした



――妬けちゃうって…誰に?…慎之介さん?それとも…松田さん?










桜の木の下に皆で座り、お花見がスタートした

すぐに慎之介さんが隣にやってきて



「美花ちゃん、ここ俺と隆やんの母校なんよ」



懐かしそうに辺りを見渡している慎之介さんの目は高校生の時に戻っているようで…



『そうなんですってね?さっき松田さんもおっしゃってました』



私がそう言うと、慎之介さんが複雑な顔をした



「…ほうか、隆やんに聞いてたんや…。この桜の前でいっつも漫才の練習しとった」

『ここで?じゃあ、宇治抹茶の原点なんですね…』

「いや、ちゃうな…。原点やのうて、通過点や…」



慎之介さんが語りながら桜を見上げる



「それを言うたんは…隆やんやけどな。凄い奴やで…俺の相方は…」



松田さんの事を語る慎之介さんはすごく誇らしげな表情をしている



「一条さーん!」



その時、スタッフの人に呼ばれた慎之介さんは、ごめんと顔の前で手を合わせて行ってしまった



――あ…そうだ。まーくんにも見せてやりたいな…



携帯を持って席を立ち、良いアングルを探して少し離れた所から桜の周りをうろうろしていた



『ここかな…』



携帯で桜を撮ろうとした時…



「美花ちゃん?どないしてん?」

『きゃっ!!あぁ、松田さん…びっくりしたぁ…』



後ろからかけられた松田さんの声に驚いてしまった



「ははは!堪忍してな?あまりにも真剣やったで、思わず声かけてしもた」

『いえ…弟にも桜を見せてあげようかと思って、写真を…』

「ああ!それでこのアングルか…。うん、いいセンスしてんで。ベストポジションや…」

『本当ですか?』



私は松田さんの言葉に嬉しくなり、携帯を桜に向けた



「ああ、もうちょい…下がった方がええな…」



松田さんに言われるまま、下がりながら携帯画面とにらめっこ…

その時、何かに躓き後ろに倒れそうになった



『あっ…』

「おっと…」



私は、松田さんに腕を引っ張られ、何とかこけずにすんでいた

…が、次の瞬間…

その体制に驚いた…

私がいたのは、松田さんの腕の中で…

目の前には松田さんの胸が…



「あっぶなぁ…美花ちゃん、足くじいてへんか?」



近くに感じる松田さんの声に、私の顔がみるみる赤くなるのがわかる…



『だ、大丈夫です…すみません…』



急いで松田さんから体を離す…

すると松田さんが私の携帯を取り上げ、少し下がって桜を撮った



「はい、これでええやろか?」

『は、はい…重ね重ね、すみません…』



私の視点とは少し違う…

もう少し高い位置からの桜…



「あ、これええなぁ!俺の携帯に送ってもええ?」



そう言いながら、松田さんは自分の携帯を取り出した



『は、はい…じゃあ、赤外線で送ります…』

「うん」



私は、その間も自分のドキドキが松田さんに聞こえないか…

そんな事ばかり考えていた



『これ、待受にしよう…』



そう言って笑う松田さんから目が離せないでいた



「ほな、ありがとうなぁ!もう、こけんようにな…」



そう言うと、皆の元へと行ってしまった

今頃になり、鼻につく松田さんの香り…



――あ…煙草を吸ってたんだ…



煙草の臭いはあまり得意ではないのに、不思議と嫌ではなかった







この桜を通過点だと言った…

その言葉が私の胸に突き刺さり、気がつけば松田さんを目で追っている

この桜を見た時に感じた慎之介さんと松田さんの絆…嫉妬を誰にしたのかは、すぐに理解できた

これが恋だとわかるまでに…

もう少し時間がかかる…














-end-

2009.04.11


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