DARLING | ナノ





侵食-愛と毒-




「すご、神堂さん…この短時間でここまでに…」



スタッフの驚きが音の閉ざされたこちらからでもよくわかる…

つい1時間ほど前の私とは違うから…


















2時間前――…‥

神堂春プロデュース第二弾シングルのレコーディング

先に曲は頂いていて頭にメロディーは入っていた

詞は…

ギリギリになったらしく、当日になって渡された…

前回は、初の神堂さんプロデュースということもあり、【話題】という意味で売り上げを伸ばした

この業界、大事なのが…2枚目



「すまない…ギリギリになってしまって。これで頼む」

『はい…。えっ?これは…』



私のイメージからは考えられないような…そんな、歌詞…



「神堂さん、いくらなんでもこの子には早くないですか?この内容は…」



スタッフもそして、私自身も同じ事を思った

それほどまでに

大人の女性…官能的な表現があったから…

まだ10代の小娘が唄うような歌詞ではなかったのだ



「今回も彼女のイメージを俺なりに膨らましたんだが…。確かに今の彼女では無理…。それを引き出すのが、俺の役目…。必ず引き出す…」



普段の神堂さんからは、想像もできないほどの決意の表れを感じた

私を見る神堂さんの視線が…熱い…



「まずは、今の君のままで唄ってみて…。そのあと、どうするか指示を出すから」

『…はい…わかりました…』



少し不安を感じながらもブースに入り、まずは曲と歌詞とを確認しながら何度か唄ってみる

スタッフは、首を傾げるばかり…

すると神堂さんはスタッフを全員レコーディングルームから追い出すと、私の元へとやってきた



「スタッフには休憩してもらった。君にいくつか質問したいんだが、構わない?」

『は、はい…』



なぜか、二人になると緊張してしまう…



「初恋は?」

『えっと…小学生の時です。同じクラスの子に…』



神堂さんが優しく微笑む…



「彼氏ができたのは?」

『高校生の時で…』



その時、神堂さんの指が私の髪に触れる…



「その時、君と彼は…キスくらいはしたのかな?」

『…そんな事まで答えないと…』
「大事な事だから!!」



今までの優しい微笑みから、目つきか変わり背筋がゾクリとする



『…キ、キスくらいは…』

「そう…激しいキスも?」

『っ!…いえ…触れるだけの…』



こんな会話をしている最中も神堂さんは、私の髪を触り続けてる…

だけどそれは特に嫌というわけではなく…



「じゃあ、君はまだ…本当の意味で《女》にはなってないね…」

『!!!…あ、あの…』

「それを…俺が引き出す…」



また、神堂さんの目つきが変わった

あの目は…?



神堂さんは首に巻いていたストールを私の目に巻いた



『し、神堂さん!何を…』

「君の中の《女》を出す…。俺の言う事を聞いて…。いいね?」

『…これは、このシングルに関係があるんですよね?』

「あぁ…。間違いなく1枚目を超える…」



私は不安に思いながらも、神堂さんを信じることにした



――私だって、自分の可能性を信じたい…



「自分の感覚を研ぎ澄まして…。頭の中に、君の好きな人を思い浮かべて…。俺を、その人だと…」



――好きな人…。私の好きな人は…



私の耳に息がかかる



『あ…っ!!!』



思わず洩れた声に驚き、口を手で押さえた



「今は、君と俺しかいない。声も出していい。…スタッフも来ない…」



私は口にあてた手を下ろした

耳に息がかかるだけであんな声が出るなんて…

自分の知らない声と、何をされるのかわからない…

視覚を奪われた感覚に確かに神経が研ぎ澄まされてきていた

神堂さんの指がいろいろなところに触れる…

首筋…うなじ…鎖骨…肩…

その度に、体がビクンと反応したり…、声が洩れたり…

神堂さんの指は、触れそうで触れない…

それが逆に私の中の《女》の部分を刺激する

私はいつしかその場に立っていられなくなり…座りこんでしまった

指は、私の腿を這ってくる

息がどんどん上がるのを感じている…

耳には…神堂さんの息…



『あぁ…や……っあ…』



体の中から熱くなる

声を上げた時、神堂さんの指が私の口内に侵入してきた

思わず口内で動く指を私の舌が追いかける…

もう、止まらなかった…



「じゃあ…」



目隠しに使っていたストールをはずす

ゆっくりと目を開けると…

目の前には、神堂さんの顔が…



「いい顔だ…」



そう言うと、私の口内に侵入させていた指を出すと、ペロッと舐めた











ゾクリ―…‥



何とも言えない痺れが体を走る

次の瞬間、私は…

神堂さんへと近づき頬に手をあて、彼にキスをしていた

神堂さんは、私の行動を受け入れ…

私たちはお互いの舌を探し、追いかけ、逃げて

何度も何度も唇を重ねた…


















それから、約10数分後…

スタッフがスタジオに戻ってきた



「神堂さん…」

「大丈夫です。俺を信じて…。先程とはきっと比べものにはならないはずですから…」









数分後…‥



「…すごい…。この短時間でここまで、変われるのか…」

「一体、どんな魔法を使ったんですか?」



魔法…確かにそうかもしれない

だが、それは…俺にしか使えなかったはずだと、今でもそう思っている

彼女の声に惹かれた時から、彼女しか見えてない俺だった…

だからこそ、彼女の隠された《女》が見えていたのだろう…

俺の仕掛けた〈罠〉に、彼女が…はまる…











〜♪



ピッ



『あの…美花です。…今夜、お時間ありますか?』

「あぁ…続きだね…」


















あの時…好きな人を思い浮かべろと言われた時…

私の頭には、目の前にいる人が浮かんでいた

神堂さんの声を…息を…指を…

そのまま感じていた

だから体の火照りは治まらなかったのだ…

そして、携帯を取り出し…電話をかける






彼に…逢いたくて…

私に…触れてほしくて…









煙草の匂いと

汗と彼の重さ…





『ずっと…貴方が…好きだったの…』

「俺も、君の事が好きだった…」



ずっと感じていた寒さや不安が

少しずつほどけていく…






















-end-
Special thanks あすか
2009.05.07

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