DARLING | ナノ





クローバー







桜も散ってすっかり葉桜になり、もうすぐ初夏…

季節としては今が一番過ごしやすいかも…

だからかな…あくびがよく出て今日も山田さんに怒られちゃった

少し落ち込んでいた私は携帯に着信があった事に気付き、携帯に手を伸ばす



――あ…



着信の名前を見るなり笑みがこぼれたのがわかった



『義人くん…』



留守電は…入ってない…

彼は、そんな事はしない…

だから…メールを打った








TO  義人くん


電話ありがとう

とても、うれしかった

だけど、出れなくて残念だったな…

久しぶりに、声を聞きたかった

仕事忙しいのに…ホントにありがとう…



FROM  美花






ピッ



送信完了…

すると、すぐに電話が鳴った



『はい…あ、義人くん…』

「今、大丈夫?」

『うん…どうしたの?』

「声、聞きたいってメール読んだから…」



ぶっきらぼうだけど、彼は優しい…

伝わりづらいけど、私にはわかる



『ありがとう…義人くん…あの…私に用事があったんじゃないの?』



電話の着信や今回の電話…

明らかにいつもの義人くんとは違う…かな…



「明日、オフになったから…」



付き合い始めて半年にもなるのに、休みが合うなんてほとんどない…



『私もだよ…明日、オフ…』

「うん…知ってた…だから連絡した」



どんどんうれしさが込み上げてくる



「今日は、もう終わり?」

『うん…終わった…これから帰る…』

「そっ?じゃあ、待ってるから…」



そう言うと電話を切ってしまった



――待ってるって…どこで?



気持ちが逸る…

私が携帯を持ったまま控室を出ると、義人くんはドアの向こうにいた



「おつかれ…」

『お疲れ様…って、ここから電話かけてたの?』



壁にもたれていた義人くんが私の荷物を持った



「うん。ここで仕事をしてたから…いこ…」



そう言うとスタスタと先を歩いて行ってしまった



『ま、待って…』
















私たちは義人くんのマンションに来た



「早く上がって…厄介な奴に見つかったら…」

「あぁ、美花ちゃん♪何?今日は、義人んとこにお泊り?」



声のする方を向くと、隣の玄関から京介くんが顔を覗かせていた



『あ、京介くん…こんばんは』



頭を下げると、腕を引っ張られ部屋の中に…



『きゃっ!!』



義人くんは、京介くんを睨みつける



「おぉ〜、こわっ…」



そんな声が聞こえた後、玄関にカギをかける義人くん…



「あいつに挨拶さんてしなくていいのに…」

『だけど…』

「何?」



キレ長の目でチラッとこちらを見た後、すり抜けるように私の横を通り部屋へと入っていった



――怒らせちゃったのかな…?



そう思うと悲しい気持ちになったけど…

久しぶりに義人くんと一緒に過ごせるんだもん…

自分の気持ちを奮い立たせて、私も義人くんに続いてリビングに入った






相変わらず、きれい好きの彼の部屋は片付いている

意外かもしれないけど、植物の好きな彼の部屋には緑がたくさんある



「ハーブティ飲む?」

『うん…あ、お湯沸かすね…』



私がそう言うと、彼はベランダに出た

ハーブを摘みに行ったのだった

私はハーブティ用のポットを用意してお湯が沸くのを待つ



――こんな時間も…好きだなぁ…



しばらくして部屋に入ってきた義人くんの手には、摘みたてのハーブの葉が握られていた



「用意がいいね…」



私の用意したポットを見て、クスッと彼が微笑む

私はその笑顔に心臓を射ぬかれる



――その顔は…ヤバイよ…



私のそんな気持ちもお構いなしに、彼の入れてくれたハーブティーの香りが部屋中に立ち込めた

義人くんはきっと気がついてない…

その香りを嗅いだ時に疲れや緊張から解放されて、一番無防備な顔になっていることを…

私は…その時の義人くんの表情が一番好き…

ソファーへと移動して、ハーブティーをいただく…



――おいし…ハーブの香りにも癒されるな…



ホッと一息をつくと、



「さっきはごめん…腕は?大丈夫?」



隣に座る義人くんがさっき玄関で掴んだ場所に触れる



『あ、うん…大丈夫…』



さっきのやり取りを思い出して、少し息苦しくなる…



「京介を見てると、なんか苛々してきて…美花を…取られるんじゃないかって…」

『そんなこと…』

「美花を信用してないんじゃなくて…俺が自分に自信がないだけ…」



そう言うと、腕を掴んだまま私の肩に顔を埋めた

私はそんな義人くんが愛おしくなって、そっと彼の手に触れた

言葉は交わさなくても、なぜだかお互いの気持ちはわかっていた





しばらくして、義人くんが顔を上げる



「風呂の用意してくる…」



一瞬なにが起こったかわからないくらいの変わりよう…

だけど…私はわかってるよ…照れ隠しなんだよね?

義人くんがバスルームに行ってしまった事もあって、私は台本を取り出した



――あくびして、山田さんに怒られちゃったしな…



台本に目をやると、私はあっという間に夢の世界へと引き込まれていった

















バスルームから出て来ると、ソファーにはかわいい寝息をたてている彼女が…



――疲れて寝ちゃったか…無理もないな…



その時、彼女の手から台本が落ちた

台本を手に取り、思い出したように本に挟んであった、ある物を取り出す

それは四つ葉のクローバーを押し花にし、シオリにしたもの…

以前、ロケに行った時にたまたま見つけて作っていた…

目が覚めた時、彼女はなんて言うかな…



彼女の醸し出す雰囲気に、惹かれている

彼女の笑顔に癒されている

彼女が…美花が…好きで、好きで堪らない





愛していける…

愛し合える…

そんな強い絆がほしい…















-end-

2009.05.23

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