LOVE TRIP | ナノ





Happy Valentine







渋谷ラブトリップ



カヨの紹介でここでのバイトを始めて数カ月がたつ

だいぶ仕事にも慣れてきた

だけど、最近の私は…













「よう!美花!…店長、こいつVIPの担当でいいよな?」

「いらっしゃいませ、二ノ宮様のご指名でしたら…」

「美花、いつものな…」

『はい!』



二ノ宮ソウ

職業は俳優

私を指名してくれるのは嬉しいけど…

その度に彼の熱狂的なフアンに睨まれる

帰りに待ち伏せされて、ジュースやお酒をかけられたり

突き飛ばされたり…

おかけで生キズが絶えない事を彼は知らない

単なる彼の気まぐれだとわからないんだろうか…

そんな状況に置かれても彼が来るのを待っている自分がいる

絶対に叶わぬ恋なのに…





そんな時、私は彼の変化を感じていた

あんなに引き連れていた取り巻きを1人も連れてこない



――彼に一体どんな変化が…?








VIPルームに行くと、私を横に座らせ、最近の仕事の話を始めた

しばらくは、ドラマの世界からも足が遠退いていたはず…



「今、撮っているのは映画だ…」

『映画ですか?…地方ロケとかあるんじゃ…』

「ああ、行ってる…けど、そんなに離れてねぇし…」



言葉が止まり、不思議に思い彼を見る



『っ?!』



彼と視線がぶつかり、心臓が悲鳴をあげそうになる



――目が離せない…あの瞳に吸い込まれそう…



『あ、あの…おかわりをお持ちしますね…』



慌てて視線をそらし、カラになったワインのボトルを持ってVIPルームを出た

一度視線が合うと目が離せなくなる…

それくらい印象的な目をしている




彼の最大の魅力…



――胸のドキドキが止まらないよ…




















「美花ちゃん?どうかした?顔が赤いけど…」



バーテンダーのワタルさんが心配そうに顔を覗き込んできた



『大丈夫です!ちょっと熱気にやられちゃったかな?』

「そう?それならいいけど…はい、これ二ノ宮様のワインね」

『はい、ありがとうございます』

「あっ!それとこれ…二ノ宮様の口には合わないかもしれないけど…一応ね…」

『そうですね…渡しておきます』
















「…オマエさぁ、あのバーテンと付き合ってんの?」



少し苛立った表情で聞かれた



『えっ?ワタルさんですか?付き合ってませんけど…』

「ふぅーん…オマエ男いないの?」

『…いません…が?』



一瞬だったけど笑みが零れたような気がした



――嫉妬…?少しは自惚れてもいいのかな…?



『ソウさん、口に合わないかもしれないけど、バレンタインの企画をしていて…。これ、店からのチョコレートです』



すると、彼は私の手からチョコレートの箱を取り



「聞いた事ねぇな…これ、どこのチョコ?」

『これは…今すごく人気のチョコで…甘くておいしいって…私も食べた事はないけど…』

「ふぅーん……チョコはベルギーのが甘くなくて俺好みだな…」



――甘いの苦手なんだ…



「美花…」

『はい…フグッ』



名前を呼ばれ顔をあげた瞬間、洋酒の香りと程よい甘さが口の中で溶けた



『うわっ…おいし…』



彼にチョコを一粒、口の中に入れられていた…



『ソウさん!これ…ホントにおいしい♪』



少し興奮気味にチョコを一粒取り、彼の口に入れようとしたとき、また視線がぶつかった



トクン……



私の心臓の音が彼に聞こえたんじゃないかと思うくらい鼓動が増していた



――…目が…離せない…



「そんなに美味い?じゃあ、味見してやるよ」



彼はそう言うと、そのたくましい腕で私を抱き寄せキスをした

唇が重なると押し開かれた部分から温かい感触が侵入する



『ん…ふぅ…』



自然と隙間から声にならない声が漏れた

ゆっくりと唇が離れると



「うん、美花は甘い…」

『!!!』



いきなりの事で抵抗すら出来なかった自分にも驚いた



『…な…何するの…?』

「…オマエさ、やっと少し敬語もなくなってきたねに。まだ、俺の気持ちに気がついてないのか?」

『ソウさんの…気持ち?』



何がなんだかわからなくなった



「オマエが…美花が…好きだ…」



真剣な目…

嘘を言ってないことはわかる

だけど…

私の脳裏に今まで受けた嫌がらせの数々が浮かんだ



「美花…迷惑か…?」



私が黙ったままでいると、不安そうな顔で覗き込む



『私も…ソウさんが…好き…』



嫌がらせをいくら受けても、彼を拒否できなかった

そんな事に負けたくない



「美花…ファンだの、マスコミだの、俺にはめんどくせぇもんがいっぱいあって…それでもいいか?」

『ソウさんが私の事好きになってくれたら…負けないよ…』



私がそう言うと、彼は優しいキスをしてくれた



「もう、さん付けやめろ!」

『ふふ…ソウ、大好き♪』



私はそう言って彼の口にチョコを一粒入れた



『味見…したいな…』

「フッ…俺も…甘いぞ…」















-end-

2009.01.24


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