LOVE TRIP | ナノ





7月7日-七夕の奇跡






なんで私はここにいるんだろう…

私の隣には、人気俳優で恋人の二ノ宮ソウが愛車のジャガーを運転している

さっきから言葉をまるで発しない

また店長に無理を言って店を早く上がらせてもらったのに…















彼と想いが通じあって数カ月…私たちには最初の別れの危機が訪れた

ソウのハリウッド進出が決まって間もない頃、離れてしまう不安から喧嘩ばかりしていた

彼の考えてる事がまるでわからなくて…

お互いを思いやる前に自分の寂しい気持ちが勝っていたんだ

だから、二人して最悪な事ばかり考えてしまって…

だけど、ソウの私を思ってくれている深い愛情に触れた時、私は自分たちの置かれている状況とか、立場をその時、本気で考えたんだよね…















次に訪れた危機は、ソウがハリウッドに行ってから…

あまりにも連絡がとれなくて、ソウがキレた…

時差ですれ違ってばかりで…

私にだって付き合いや急なシフト変更だってある

ソウだって撮影が延びたり…

あの時は、店長がまとまった休みをくれて、ソウに逢いに行ったんだよ…

今でもあの時、私を見たソウの顔は忘れられない…












私たちは何度となく《別れ》の危機にあってきた

それは、どんなに仲の良い夫婦や恋人同士でも必ず当たってしまう壁…




今夜は7月7日…

さっきから何度もソウにどこに向かっているかを聞いても答えてくれない

窓から見える景色がどんどんと流れている

何も話さないソウ…追求をしない私…

空を見上げると曇り空

それはまるで、私たちの心そのものだった









私はあまりの沈黙に耐えられず



『ソウ…CD止めて、ラジオつけていい?』



苦肉の策だったかもしれない

何も言わないままソウはCDを止めて、ラジオに切り替えた

懐かしいメロディーが聞こえてくる

そして、DJの声…

昔はよく聞いていたラジオからこんなフレーズが聞こえてきた





“1年に1度の七夕…
織り姫は彦星様に逢うために天の川へ向かいます
貴女は誰に逢いに行きますか?”





私はそっと運転しているソウを見る…



――どんなふうになっても、やっぱりソウが好き…



その時流れた曲に導かれるように、私は瞼を閉じるとそのまま眠ってしまった

















目が覚めると車は止まっていて隣にソウはいなかった

車を降りると真っ暗な視界に不安になる



『ソウ?…どこ?』



少し張った声がやけに響き渡る

暗闇に目が慣れてきた頃、遠くにぼんやりと人影が見えてそれがソウだとすぐにわかった



『ソウ!!!』



私は彼に向かって駆け出す

近くまで行くと天を見上げたソウがこちらに向き



「…起きたか?…美花…」



私の名前を呼び左手を差し出してくれた

さっきまでの事なんてすべて忘れるくらいの極上の笑顔で…



『…うん、寝ちゃってごめんね…』



ソウの差し出してくれた左手に私の手を添えると、ソウがギュッと握ってきた

私もうれしくなり握り返す



「空…見上げてみろよ…」



そう言われて天を仰ぐ…



『…あ…』



さっきまでは曇っていて全く星なんて見えなかったのに…

手を伸ばせば星が掴めそうな…

今にも星が迫ってきそうな…



『満天の星…』



私は思わずそう呟いていた



「…美花…悪かったな…怒らないで聞いてほしい…」



ソウはそう言うと、なぜ私にあんな態度をとっていたのかを話してくれた



『…役作り…?』



私はそれを聞くと、そのままそこに座りこんでしまった



『…よか…った…ソウが私から…』



そこまで口にすると、その先は声が続かなかった

その場に座り込んで動けなくなった私をソウが優しく抱きしめてくれる



「…ごめん、ホントにごめん…」



どんどん腕に力が込められていく



『…ソウ、怒ってないよ』



私がそう言うと、ソウは私の顔を覗き込んだ



『私ね…さっきいろいろ考えたんだ。今までにあった事とか、喧嘩して別れそうになった時の事とか…』

「…うん…」



ソウの右手が私の頬に触れる



『だけどやっぱりソウが好きで…大好きで…どんなに淋しくても心細くてもそれを満たしてくれるのは、ソウじゃないとダメなの…』



私の頬を触っていたソウの右手は私の髪をかき上げる



『だから…だから…』



大きく息を吸い込んで…



『私を…ソウのお嫁さんにしてください…』



――言っちゃった…



それまで私の髪を触っていたソウの動きが止まる

怖くて、怖くて…ソウの顔を見る事ができない



「…美花…さっきのラジオで言ってた事…俺は嵐がきても、美花に逢いに行くぞ…」

『ソウ…』

「だいたい、オマエ反則なんだよ…生意気に、逆プロポーズなんかしやがって…」



言葉はきついのに、言い方が…柔らかい…

照れてるよね?絶対に…

照れたソウの顔が見たくて、そっと顔を上げると目の前には私を捕らえて離さないソウの瞳…



『…あっ…』



フッと笑みをこぼすと



「喜んで…お姫様…」



胸がギュウッと締め付けられる



『あ、ありが…』



最後まで言い終わらないうちに唇を塞がれた



「喋りすぎ…ゆっくりキスもできないだろ…」



そう言ったソウの後ろに流れ星が見えた





何度も重なるソウの甘い唇…

流れ星に願いを込める



〜いつまでも、ソウが幸せでありますように…〜

















- end -

2009.07.07


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