LOVE TRIP | ナノ





ハルノカヲリ

※この話は、セイヤ続編ブラエンの続きを書いてます





















セイヤさんがアメリカに行って、もう何度目の春を迎えただろう…

留学の3年という期限が終わろうとしている

嘘の恋人から本物の恋人になって3週間後に彼はアメリカへと旅立った


それは付き合う前から決まっていた事で…

彼を見送った空港では、本当に身を引き裂かれたかと思うくらい

心が痛くて…

行かないで!…なんて

安っぽいドラマのワンシーンみたいな台詞を言いそうになって…

今、思い出しても胸が締め付けられる

叶わないと思っていた…私の片思い…

それを

セイヤさんが叶えてくれて…

ホントに嬉しかった



アメリカに発つまでの時間は思ったよりもあっという間で…

家にある時計の電池を抜いても

無情にも時は刻まれていた

付き合い始めって…

いつも彼の事を考えて

常に傍にいたくて…

そんな気持ちとは裏腹に、セイヤさんと心を通わせた事に後悔したりして…



初めての遠距離恋愛に

気持ちを継続させられなくて、押し潰されそうになって…

でも…

それももうすぐ終わる…


空港のロビーでその時が来るのを待っている


何度も何度も、携帯に表示されている時間を確認するけど

時間は中々進んでくれなくて…

本当に3年前と同じ様に時を刻んでいるのか疑問に思ってしまう


アナウンスされる度に耳を傾けて、はぁ〜っと息を吐き出す

携帯を開き、セイヤさんから届いた最後のメールを読む







‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


FROM:セイヤさん

SUB:Re:


今から搭乗する
明日の今頃は
美花をこの腕に抱いて
眠っているのかな

早く会いたい
美花を抱きしめたい
会えなかった3年分…

覚悟しろよ♪



セイヤ

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐






何度このメールを読んだか分からない

読む度に胸がドキドキして…

セイヤさんの腕の中を思い出したいのに、最近はあまり思い出せなくて少しもどかしさを感じていた


早く彼を感じたい…


カバンから鏡を取り出し、メイクと髪型を整える

3年たってガッカリなんてされたくないもんね






その時、鏡の中の違和感に気がついた



『…セ…ヤさ…』



鏡の中に映るその人に目がくぎ付けになり、暫く鏡越しに見つめ合った

セイヤさんが映り込んでいる…

手が震えて…

声すら出なくて…

気がつくと、私はセイヤさんに後ろから抱きしめられていた



「美花…ただいま…」



彼の香り…

たくましい腕…

何一つ、3年前とは変わってなくて…

忘れかけていた何もかもがフラッシュバックした

会えた喜びといきなりの出来事に言葉が詰まって出てこない

あんなに練習したのに…


鏡の前で笑顔を作って

『お帰りなさい…』

って、言葉を紡ぐのを…



「俺…。まだ帰ってこない方がよかったか?」



悲しそうな彼の言葉に目一杯、首を横に振った

鏡をカバンに入れ、彼の腕にそっと触れる

顔を少しだけセイヤさんに向けると、視界に彼が入った


3年ぶりのセイヤさん…



『…お…お帰りなさい。…セイヤさん…』



やっとその言葉を紡ぎ出せた時、私の目から涙がこぼれて…

セイヤさんの腕に落ちた…



「…やっと言ってくれた…。ただいま…」



そして…

唇がそっと重なった…



















「1便早いのに乗れたんだけど、連絡する暇がなかった…わりぃ…」

『そうだったんだ…』



手を繋ぎ、空港を出る



「ま、それだけじゃねぇけどな…」

『…?』



セイヤさんの指差す方向を見ると、多くの報道陣がいて…



『っ!!…セイヤさん、よく見つからなかったね…』

「こんな俺を見て気がついてくれるのは、美花くらいだ」



確かに、3年前のセイヤさんは、金髪に格闘家としては肌の色も白い感じ…

今の彼は…

髪は黒く少し伸びていて、髭まで…

色も浅黒いかな

以前の彼と見た目はかなり違う



「報道陣に捕まったら煩いから、ちょっと変装の意味でイメチェンした!」



満面の笑みは、以前の彼となんら変わりがなくて…



『その笑顔は変わってないし、それに…カッコイイのもそのまんまだよ…』



そう言うと、繋いでいた手を恋人繋ぎにしてくれて



「美花だけがわかってくれたら、それでいいよ」



ギュッと握りしめてくれる

私もそれに応えるように彼の手を握りかえした



「…美花は…」

『…?』

「…きれいになった。前から可愛かったけど…。…益々、俺好みになった…」



真っすぐにそう言われて恥ずかしくなる

絶対に顔が赤いよ…



『…あ、ありがとう。でも、恥ずかしい…』

「もう、絶対に離れないから…。美花も俺から離れるなよ」

『うん…』



どこからか、桜の香りが漂ってきた

鼻につくわけではなく…

ホントにほんのりと…



「日本に帰って来たって感じの香りだ。美花の匂いと、桜の…」



大きく息を吸い込み、気持ち良さそうに空を仰ぐ







新しい…

セイヤさんとの生活が始まる

3年前の続きをしようね?

セイヤさん…



「美花、変わらず…愛してるよ…」

『私もだよ…。愛してます…』


















-end-

2010.05.06


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