LOVE TRIP | ナノ





もう一度、繋いでいいですか?








期間限定…

嘘の恋人…



その契約が私の気持ちに歯止めをかけている



貴方はP-1のスター選手で、抱かれたい有名人No.1で…

だから、彼の周りには常にパパラッチがウロウロしている



アメリカに留学するまでの残り一ヶ月を穏やかに過ごしてもらうための…

偽装恋愛…



でも、彼と一緒にいる時間が増えれば増えるほど…

彼に惹かれていく自分がいる



「お疲れ!」

『っ!!…セイヤさん…わざわざ迎えに来なくても…』

「だって、彼氏だし…?帰ろ…」

『…はい』



セイヤさんの車に乗り込むと、渋谷から離れる



「やっぱ、ついて来てるぞ…」



セイヤさんの言葉に驚いた



『えっ?…だって…』



一般人の私と付き合っているからとコメント発表したから大丈夫だと、店長も言っていたはずなのに…



「念のため迎えに行って正解だったな…このまま俺のマンションに行こう」



何度かカモフラージュの為にお邪魔したセイヤさんのマンション

私の中で大きくなるセイヤさんへの想いを閉じ込めないといけないのに、ズルズルと吹っ切れないでいるのは、こういう事も関係しているかも…

一度引き受けた事は投げ出したくない

でも、こんなにも私の心にセイヤさんの存在が大きく入り込んでくるとは思わなかった

















車がマンション近くの路肩に止められた



『…?…セイヤさん…?』

「コンビニ寄ろう!」



車を降りた時、私も気がついた

白いワゴン車が何とも言えない位置に止まっている

たぶんあれがつけて来た車…



私の意識がそちらに行っていると



「なぁ、手…繋ごう!」

『え?』



だって…

付き合ってるフリだけならそこまでしなくても…



「右と左…どっちがいい?」

『…じゃあ、右…』

「マジ?俺、こっちにいる方が落ち着くんだ。相性いいんだな!俺達!!」



セイヤさんがギュッと手を握ってくる

私は…セイヤさんの右手を両手でそっと包み込んだ



「な…」



びっくりしてるセイヤさんの表情…



『セイヤさんは右手を…痛めてるでしょう?あまり力…いれないで…』



私をじっと見つめるセイヤさんにドキッとしてしまう

格闘家として第一線で活躍してきたセイヤさんの右の拳は、ボロボロになっている



「…何か…すげーな。ホントに彼女に言われたみたい…」

『…だって…彼女でしょ?』



私のその言葉を聞くと…



「うん…そうだな…」



優しい笑顔を返してくれる

私は…セイヤさんが好き…

自分の気持ちに自覚したと同時に目の前が暗くなった



「…なぁ…俺達、ホントの恋人にならねぇか…?」



耳元近くで囁かれた言葉に、抱きしめられている事に気づく

私の視界はセイヤさんの胸に覆われていた



『…セ…セイヤさん…?でも…』

「オマエの気持ち…聞かせてくれよ…」



私の気持ちは決まっている

でも、一ヶ月後に彼は…



『…好き…です。…セイヤさんが…』



消えそうな声で、私はそう呟いていた



「…良かった…」



セイヤさんの腕に力がこもる



『く…苦しいで…す…』

「あっ…わり…」



緩んだ彼の右の拳にそっと触れた



『来月、セイヤさんがアメリカに行く時…我が儘言って困らせるかもしれませんよ?』



私の言葉の後にセイヤさんは微笑み、右の拳を私の左手に絡めてきた



「いいよ。オマエなら俺を困らせても…」



絡めた私たちの手は、恋人繋ぎになり



「愛してる…」



耳元で囁いてくれて、とびっきりの笑顔を見せてくれた



「よ〜し!コンビニ行ってうまい棒買い占めるぞ!!」



繋いだ手をブンブン回して、嬉しそうに小走りになった










次の日の新聞にその写真が掲載され、私たちは益々パパラッチに追いかけられる事になる

でも…

もう、嘘でもなんでもない







セイヤさん…大好きです

セイヤさんのぬくもりを忘れたくないから

もう一度、繋いでいいですか?


















-end-

2009.12.20


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