LOVE TRIP | ナノ





もう少し、このままで






『フッ…うっ……』



泣いたらダメだと思えば思うほどに涙が溢れてくる

もう、他のスタッフも帰った…

閉店後の…スタッフルーム…

誰もいないとこじゃないと…泣けないよ…

どんなに辛い事があったって、お客さんの前に出たら関係ない

だけど、仕事が終わり気が抜けてしまうと悲しみがどんどん込み上げて溢れてしまう

















どのくらい泣いたら…

涙で洗い流したら…

この悲しみは消えてくれるんだろう









ロッカーの前にズルズルと座り込んだ

静かな部屋には私の嗚咽だけが響きわたる

流れる涙もそのままに泣き続けた










ふと、鼻についたその香りに我に返る

顔を上げようとした時、後ろから優しく抱きしめられた



『えっ?』



人が入ってきた気配に気がつかなかった



「何を一人で泣いてるんだよ…」


この声は…



『て、店長…?』

「オマエはいつも笑顔だけど、何を抱えて一人で泣いてるんだ…」

『そ…それは…』



言えない…

何で泣いているかなんて

それを言ってしまうと…ズルズル甘えてしまう



「ど〜せ聞いたって言わないんだろ?言えるくらいなら、一人で泣いたりしないよな…」



店長は何でもお見通しなんだな…



「なぁ、せめて泣くなら…今は俺の胸で泣けよ…」



そんな優しい事言われたら…

その先を考える前に…

後ろにいた店長の胸に飛び込んでいた



「よしよし…」



優しく頭を撫でてくれるその心地良さに、私の中で緊張の糸がぷっつりと切れたのか



『う…っく…ふぇ…』



子供の様に泣きじゃくってしまった

不思議なくらい温かい店長の胸は安心感があって…

止まらないと思っていた涙もいつの間にか枯れていた



「…ん?…泣きやんだか?」



優しい店長の声…

そして私を覗き込もうとする



『やっ、やだ…』



泣き顔を見られたくなくて、顔を背けた




「おっ!元気になったな…」

『…すみません…』



今頃になって恥ずかしくなって…



「なぁ…抱きしめていい?」

『えっ?』

「すぐに否定しないって事は…」












思わず顔を上げると笑顔の店長が私を抱きしめてきた



「いつも頑張ってるから、特別ボーナス!」



さっきまでとは違う…

よくわからないけど、深い愛を感じる店長の行為

私は店長の背中にそっと腕を回す



『…たっぷり充電させてください…明日からまた頑張りますから…』

「おぅ!どんどん吸い取れ!おやじパワーも中々のもんだろ?」



店長って自分をおやじだといつも言うけど…

そんな風には見えないよ…



『あれ?そう言えば店長…今日は…』

「あぁ。休みだったけど、やっぱ店に来ないと落ち着かなくて…」



店長の私服姿を見て

なんだか…ドキドキする



「俺に惚れたか?」

『っ!…惚れてません!!』



店長のお陰で…元気になった

でも…

もう少しだけ、このままで…

いさせてください…




















-end-

Special Thanks 描き隊 ひろ
2009.12.23

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