MYSTERIOUS THIEF | ナノ





一回しか言わねえからな



『キャー!!拓斗さん取れました♪』



あ?
マジか!!
オレがいくら使ったと思ってんだよ



「ふ〜ん…でも、こっちのホラエモンのがでかいし、オレ狙ってんのそっちだし…」



こうしてムキになってしまったゲーセンのクレーンゲーム
コイツに取れてなんでオレには取れないんだ
大体、インドアのオレがゲーセンて
学生の頃以来だし
あの頃、ゲーセンのゲームとか制覇してここに来る事もなかったんだけど…


















「あ?プリクラ?」



何言い出してんだ、コイツ…



『夢だったんです。彼氏とプリクラ撮るの…』



コイツ、マジで言ってんの?
夢とか、ありえねー…



「ぜってー、ヤダ!」

『絶対に嫌なんですか?』



出た…
コイツの無自覚な必殺技!
上目使い…
こんなん、反則だろ



『…拓斗さん…?』

「ぜってー無理!!」















で…
何でここに居るんだ?オレは…



『拓斗さん♪笑ってくださーい!』

「…ヤダ…」

『もう…たっくん?』



何、いつの間におねだり上手になってんだよ、コイツ!!
ぜってー、宙だな…
クッソ…
後で締めてやる

小さい空間にコイツと二人っきり…
こんなに側にいるのに
コイツが隣にいるオレよりも
正面のカメラに写ったオレばかりに微笑むのも…
なんか、イライラする

でも…

さっきからずっと笑ってて嬉しそうなんだよな
そして…

コイツの笑ってる顔、俺、す…す…スキヤキ食いてぇー!
って
誰も聞いてないのに、バカかオレは…



『もう、そんな顔しないでください…』



いらついてるオレに気がついて、怒られた子犬みたいな顔して…



「笑うの無理…」



シャッターの合図に合わせてアイツにキスしてやった
…ったく…
ナニやってんだよ…



「何、ニヤケてんの?…まさか、キス写真欲しかったのかよ、変態!」

『ちょ、酷い!拓斗さん!』



真っ赤になって怒る顔もかわ…かわ…かきくけこ!!



『もう!撮り直しますよ!』



そう言ってボタンを押そうとしたコイツの手を抑えた



「…いい!これで…」



益々真っ赤になって



「プッ、ゆでダコ」



思わず吹き出すと、本気の力でオレをポカポカと殴ってくる
結局、プリクラはキス写真とコイツがオレを殴ってる写真
こんなん誰が喜ぶんだよ…って、結構いい写真じゃん
ま、こんなのも悪くないし



「あ…」



プリクラって店の奥に設置されてるせいか、目に飛び込んできたゲームの数々にオレのゲーマーの血がウズウズとする



『拓斗さん、ゲームやりたいんでしょ?いいですよ!私、横で見てますから』

「…っ…」



な、なんだよ、コイツ!
そんなん言うの反則だろーが!
一々、かわ…かわ…ああああああああ

かきくけこ!!

オレのヘタレ!!



「じゃ、アレ!二人でやるぞ」



横にコイツ置いといて、ゲームに夢中になってる間にナンパとかされるかもしんねーし
それなら二人でゲームやる方がいいっつーの



『え?私、苦手ですよ』

「いいんだよ、お前のマヌケな姿見て笑ってやる」

『ホント、拓斗さんて…』

「なんか言った?」

『いいえ!』



初心者のコイツと対戦してコテンパンにしてやって、でも
笑うコイツの笑顔が眩しくて



「やっぱり、拓斗さんには適わないですね♪」



楽しそうで
どんなわがままも聞いてやりたい
ぜってー口に出してやんねーけど



「あ、拓斗さん!ホラエモンが!」



ホラエモン?
そんなのがこんなとこに…

ある!!!!!

しかも、こんなにでっけーとか、ありえねー
しかもガラスにへばりついて瞳をキラキラ輝かせながら美花がホラエモン見てるとか



「…オレが取ってやる…」

『え?…あの…拓斗さんが?』

「なんか、問題ある?」

『…いえ…、こっちにシッフィーちゃんありますよ?』



お前、なに勘違いしてんだよ…



「オレは、ホラエモン派だし!シッフィーはヒゲの趣味だし!」
















簡単にサクっと取ってやる…はずだった
このクレーン、イかれてんじゃねーのか!
引っ掛け所とかこれ以上ないってくらいバッチリだし!!
で、
穴に入れる前に落ちるとか



「…この、根性なし!!」

『…拓斗さん、ぬいぐるみにあたらなくても…』

「あ?」



横から話しかけられると気が散…



『私にやらせてもらえませんか?』








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