MYSTERIOUS THIEF | ナノ





小指を絡ませた



カラ〜ン カラ〜ン!



「は〜い、5等のたわしねぇ」

「あ〜あ…ねぇ、ティッシュとたわししか当たらないようになってんじゃないの?」



目の前に繰り広げられる商店街の風景

私は憂鬱な気持ちでそれを眺めていた

わたしの手元にある数枚の福引き券を眺め、またため息をつく



『…これが…拓斗さんがくれたプレゼント…』



今朝のやり取りを思い出し、またため息が出る



「おまえ、悪運だけは強いし、俺からプレゼントもらえるだけでも有難く思え」



それだけ言うと、徹夜続きだった彼はすぐに眠ってしまった

せっかくお休みが重なって拓斗さんと一緒に過ごせると思っていたのに…

仕方なく福引きをするために商店街にやって来た



「お姉さん、どーぞー♪」

『あ、はい…何回引けますか?』



高校生くらいの綺麗な男の子に声をかけられる

こんなに綺麗な男の子なのに…商店街のお手伝いなんてえらいな…



「3回できるな…」



うわ、この子もカッコイイ…

よく見ると、この福引き所は高校生の男の子5人と女の子1人でやっていた

仲も良くて息もピッタリ

商店街のアイドルって感じにも見えた

皆かっこいい

今どきの高校生ってこんな感じなのかな…



「じゃー、3回引いてください♪」

『は、はい』



爽やかだなー…

拓斗さんにはない爽やかさに目の前がキラキラしてしまう



「残念!5等のたわしでーす」



5等か…

さっきのお客さんとのやり取りを思い出す

じゃあ、次はティッシュが当たるのかな…



「あー!ティッシュでーす」



フウーと息を吐く



「あ、お姉さんももしかしてたわしとティッシュしか入ってないって思ってる?」



うん、密かにそう思ってる…

ま、顔に出てるのかもね



「お前、悪運だけは強いし」



朝言われた拓斗さんの言葉をいきなり思い出した

これも悪運って事につながるのかな?

よしっと小さな気合を入れて最後の福引きを引く

その手首をつかまれた



「え?」



顔を上げると、さっきまで机の向こうで景品を出したりしていたとてもカッコイイ男の子



「もう!いっちゃん、何お客さんの手握ってんの!」



綺麗な男の子がいっちゃんらしき子に言う



「お姉さんさぁ…本気で景品狙ってんだったら、いい事教えてやるよ」

『いい事…?』

「運てのは、左手で念を込めて左奥の隅っこにあるやつを引いたらいいんだって…
ほんとかどーか知らねーけどやってみたら?」



左手…か…

思わず左手を見てニギニギとしてみる

私はこの手に掴めるのかな…

と、その時…



「美花!!」



聞きなれた、そこにはいないはずの人の声が聞こえた

振り向くよりも早く彼が私の手首を掴んでいたいっちゃんくんの手を払い退けて私を彼の腕の中に閉じ込める



『ちょ、拓斗さん?』

「なに…オレ以外の男に触らせてんの?」



うわ…怒ってる…



「いってーな!」



あ、いっちゃんくんも…怒ってる…?



「いっちゃんが悪いんだから、謝った方がいいよ」



紅一点の女の子がいっちゃんくんに駆け寄る

恐る恐る彼を見るといっちゃんくんと目が合って…

彼がニヤリと笑った



『え…?』



思わず胸がドキリと音を立てる



「オレの女に触ったり笑いかけたり、お前死にたいの?」



お、オレの女…

初めて聞く拓斗さんの言葉に思わず顔がにやけてしまう



「そんなに大事な女だったらあんな遠くから見てねぇで側に付いててやれよ」



遠くから…?

その言葉を不思議に思い拓斗さんを見上げる



「ばっ、バラすとか、ありえねー…」



ムッとした顔に頬が一気に赤く染まっていく



『いつからいたんですか?』

「………」

『まさか、寝たフリして最初からですか?』



カマをかけると耳まで真っ赤になって私が核心を突いたんだとわかった



『どうして?』

「……教えねー…」



こうなったら絶対に拓斗さんの本心が聞けなくなる



「ねえ、紗枝も福引きやりたい!」

「順番だから待ってな!…あの…福引き引いてもらっていいですか?」



爽やかな男の子に言われて慌てて拓斗さんの腕の中から離れる



『す、すみません…』



拓斗さんから離れても右手だけはしっかりと握られていて…

私は左手を箱の中に突っ込んだ



















「悪運強いって言ったろ?」



得意満面の拓斗さんはご機嫌で…

さっきいっちゃんくんにあんな事を言った事も忘れてるんだろうな



『これって、悪運じゃなくてくじ運じゃないですか?』



結局、私があの後当てたのは2等のシッフィーちゃんの大きなぬいぐるみだった

だけど、私の後に福引きを引いた小さな女の子が特賞の温泉旅行を引き当てて…

あまり嬉しそうではなく拓斗さんが持っていたシッフィーちゃんに視線を送っていた



『だけど、交換して良かったんですか?拓斗さん、シッフィーちゃん好きでしょう?』

「ばっか!オレはホラえもん派だっての!だいたい、シッフィーより温泉のがいいに決まってる」

『フフ♪私も温泉になって嬉しいです!』



本当はなんで拓斗さんが私を一人で行かせたのかとか、どうして隠れてついて来たのかとか

聞きたい事はあるんだけど…

今は、いーや…

拓斗さんがご機嫌で笑っているから

きゅっと拓斗さんの袖口を握る

照れ屋だからあんまり手を繋いでくれないんだよね…



「…今日は特別…」



そう言って小指を絡ませる

精一杯の彼の照れ隠し…



「何、ニヤニヤしてんだよ…キモイ…」


















後日、黒狐のマスターの占いで私が一人で福引きを引いたら大吉だったんだと聞いた

この時点で温泉旅行は二人きりではなく、皆と…

ま、皆で行っても楽しいからいいんだけど

いつかは拓斗さんと二人きりで旅行に行けるのかな…








-end-

title: 10mm 様

2011.10.06



相互リンク one* ナツ様に捧げます
HAPPY BIRTHDAY
遅くなって申し訳ない…(T-T)

素敵な1年を過ごせますように♪
怪盗と恋色をコラボさせてみますたwww

ナツ様のみお持ち帰り可です


幸より

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