MYSTERIOUS THIEF | ナノ





弱い私なら愛してくれた?

※notヒロインでもOKな方のみどうぞ…












「やっほ〜♪宙くん参上!!」



二階の窓から現れる彼…
更科宙
中学の時の同級生



『ねぇ、アンタって暇なの?』



何がきっかけだったのかな…
最初はただの好奇心だったのかも



「暇じゃないよ〜、だから息抜きさせて〜」



当たり前のように私の背後から抱きつき、器用にボタンをはずしていく…
彼の指が私の顎にかかりわずかに込められた力で彼の甘えてくる表情と向き合う
視線を一人占めして、自然と瞼を閉じると唇に温もりを感じ
彼の舌先が唇をなぞって口内に侵入してくる
嫌悪感なんてない
始めからそんなものを彼に感じた事はなかった

中学の頃から女の子にはモテていて、調子のいい彼は友達も多かった
そんな彼が何故私を抱きにここに来るのか…
疑問に何度も頭を捻らせたけど答えなんて出るはずもなく
かといって彼に理由を聞く勇気もなく
ズルズルと求められたら応える…そんな関係を何年も繰り返していた
彼氏でも彼女でもない…
…繋がりは躰だけ…
この繋がりを失う事が今の私にとって怖くて怖くてたまらなかった
依存しているのかも…彼、更科宙に…



『…っん…』



吐息も声もすべて奪われて、手さぐりで部屋の電気を消し鍵をかける
1Fで眠る両親に気を使いながら彼から与えられる愛撫に身を委ねた






中学で同じクラスになったのは2年の時
言葉を交わしたのも数える程度
高校も別々のところに通っていたのに偶然に再会して
なぜか今はこういう関係…
セフレ…というとまだ聞こえはいいかもしれない
気が向いた時に私を抱きに来る…
拒否もせずに抱かれてしまっている私を、彼が好きになってくれるとは思ってはいない
少なくとも私には…下心がある
彼…更科宙と…繋がっていたい…
私はただの…都合のいい女…
少しでも彼に気のある素振りを見せてしまうと彼は私の手からすり抜けてしまう
そんな…あやうい関係…
彼は自分に興味を持つ子には見向きもしない
だから私は彼に気のない素振りを魅せる…
本当の心を隠して…
ずるい人間…なんだ…







『…帰らないの?』



いつもなら事を終えると余韻を楽しむでもなく帰り仕度を始めるはずの彼が
今夜は動こうとしない…



「うん…?…たまにはいいでしょ?」



本心なんて見えない
見ようとしなかったのに、今夜の彼は泣いているように見えた



『ほんっと、自分勝手…』
「うん!!」



嫌味を言ったのに通じてない
笑顔を向けられても嘘くさい
本当に心の底からの笑顔なんて見た事ないけど…



『…忙しかったから息抜きにきたんじゃなかったの?』
「息抜きねぇ…てゆーか、違うもんヌイちゃったけどねー」



今日の彼はいつもと違う…
でも
詮索はしない
そう決めている



「ちょっとだけでいいから…ここで眠らせて…」



私の返事も聞かずにスッと目を閉じると途端に寝息が聞こえた
どのくらい疲れていたんだろう…
初めて…彼の寝顔を見る
まつ毛が長くて、ホントに綺麗な顔
オレンジの髪が良く似合っている
チャラチャラしてて…
すごく軽く見える彼はなんとなく偽物のような気がしていた
本心は見えないけれど、ここに来てくれる…
忘れないでいてくれる…
私は…今にも切れそうな糸で彼と繋がっていた








『…ん…』



ふと目が覚めると彼の存在はなく冷たくなったその場所が時間の経過を物語っていた
床に散らばった自分の衣服を集める
いつも行為の後に訪れる虚無感を感じなかったのは、彼がいつもの彼ではなかったから…
余韻に浸れたわけではないけれど
私の隣でいつもどこか気を張っている彼が眠った…
その事に意味があるような気がした
だけどそれはいずれ私の中に【期待】が生まれたからだと知って
【絶望】を味わう事になる
まだ知る事のないその感情をしり目に私は彼が帰ったあとの窓を見つめて微笑んでいた






連絡なんて来た事がない、したこともない
私はただ待つだけ…
待っている素振りも見せずに…
いつもと同じはずだった…
だけど…
彼が私の部屋を訪れることは…二度となかった…





数日後…
たまたま見かけた彼の隣には、年上の可愛らしい女性がいた
2人の雰囲気から付き合っているのだとわかり指先が冷たくなっていくのを感じて咄嗟に視線を外してきた道を戻る

―――本命だ…更科宙の…

彼の表情を見ているとわかる
誰の前でもそんな表情見せたことない
鼻の奥にツンとしたものがこみ上げて、冷たくなった指先をギュッとこぶしの中に閉じ込めた

【期待】していた自分…
【恋】を知った更科宙…
だけどその相手は私ではなかった【絶望】…

どんな形であれ、彼と繋がっていたいと思った私の小さな小さな繋がりの糸は…
切れてしまった…





弱い私なら…
彼に振り向いてもらえたのかな?

違う…
私が強くなかったから振り向いてもらえなかった


いい顔をしていたな…
私も恋をしよう
本当の意味で強くなって新しい恋をしよう







‐end-

title:確かに恋だった様

2012.11.18



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