MYSTERIOUS THIEF | ナノ





知ってる、好きだから


『もう!蛭川さん、いい加減にしてください!!』

「ばぁーか!何ムキになってんだよ」



なんでも柳瀬とのデートに髪をセットしてきたらしい…
なんか…ムカつくし…
その反面、アンタの幸せそうな笑顔を見ると安心してる俺もいる
だけど…やっぱりその笑顔を引き出しているのが俺じゃないって事に腹がたつ
もう、割り切ったと思っていたのに…
本気で柳瀬との事、応援してるのに…

やり切れない気持ちが行動に出るらしく
美花の髪を引っ張って彼女の反応見て面白がる
虚しい気持ちを隠すようにして…



「そんな目くじら立ててると、しわになるし!ただでさえブスなんだから、もうちょっと愛想よく笑え!」

『誰のせいだと思っているんですか…全く…』



心の声を思わず呟いてしまう美花が愛おしい…



「なーに、むくれてんだ?」

『流輝さん♪』



愛しの王子様の登場に表情が一気に明るくなる



「拓斗も、いい加減コイツをからかうのはやめろ…」

「はぁ〜、つまんね〜」



ほんっとにつまんねえ…
絶対…オレのこの感情を柳瀬はわかってる
でも、妬くわけでもなく
その余裕の態度がオレをイライラさせてるんだし…











結局ゆうべは黒狐の2Fに泊まり、深夜に帰宅した2人の気配を感じながら眠りに落ちた






あまり眠った気分ではなく最悪な寝起きで起床
ま、今日は出ても出なくてもどっちでもいいし…
重たい頭をなんとか持ち上げて黒狐の1Fへと降りる
この店の朝は柳瀬の作ったみそ汁の匂いでいっぱいになる
それがいつもの光景
ヒゲは仕入れに出かけていない…
もう柳瀬は出勤してる時間だから、ゆっくりとみそ汁を堪能…
…そっか、コイツがいたんだった
なんか様子がおかしい



「…朝からうっとーしーし…」

『…蛭川さん…おはよーございます…』



なんなんだよ、この負のオーラ…
マジうぜー…
机にデコくっつけて…



「バッカじゃねーの…(ボソ…)」

『…バカですよー…私は…』



どーせ、デート中に柳瀬に女が絡んできたとかそんなで…



『蛭川さん、私…昨日頑張ったんですよ…オシャレして流輝さんに釣り合うように…だけど…』



美花に最高の顔をさせるのもこんな顔をさせるのも…柳瀬…



『…流輝さんの回りにいる人たちって…私とは棲む世界の違う人たちばかりで…
考えないようにしても…目の当たりにしちゃうと…私だって少しくらいは…へこんじゃいますよ…』



あーあ…
こんな美花をほったらかしにして柳瀬は仕事に行ったわけか…



「…そんなに辛いなら…やめたら?」

『…え?』



勢いよく顔を上げた美花のデコは机に突っ伏くしてたせいで真っ赤になってるし…



「柳瀬やめて俺にしとけばそんな毎回へこむ必要ねーし…」



あ?俺、何言って…
勝手に口からサラッと出た言葉に急にメチャクチャ照れた…



『…あの…でも、そんな』



コイツの答えなんて決まっているのにわずかな期待をしてんのか!!



「…知ってる…美花が柳瀬の事好きなのは…でも…」



やっぱ、心のどっかで期待してる…
俺を選べって



「悪りーけど…俺は弱ってるお前に優しい言葉なんてかけねーし」



柳瀬の作ったみそ汁を口に含む
相変わらず…うめー…



『蛭川さ…』

「今がチャンスだし…すぐに返事すんな!!…でも、真剣に向き合っ…て…」








マジで柳瀬やめて俺にすれば他の女と比べるなんて心配しなくていいし…
柳瀬に合わせて無理して背伸びする必要もねーし…
アイツの弱った心に追い打ちかけてるし、俺…
…最低…最悪…





あの日から明らかに俺の事意識して避けてるし
柳瀬ともギクシャクしたまんま…
てか、いつまで続くんだこんな状況…



『…ちょっと…いいですか…?』



俺も逃げられない…
現実を受けとめる



『…私…流輝さんが好きです…』



うん…知ってる…



『でも…蛭川さんに真剣に向き合えって言われて混乱して…
蛭川さんの事ばかり考えてしまっている自分も…いるんです…』

「………」

『…あっ…』



気がついたら…
美花を抱きしめていた…
こんなに小さくて…柔らかかった…
美花の使っているシャンプーの匂いが鼻腔をくすぐる
すべてが愛しくて心が震えて…
美花の強張った体を離す



「…悪り…すっげー…うれしい」

『え?』

「真剣に向き合ってくれて…その間、俺の事ばっか考えて…」



こいつってこういうヤツだよな
俺が好きになった女…だし…
柳瀬が選んだ女…
そして、柳瀬を選んだ女…



「柳瀬のとこ、戻れ…アイツの事を大好きなお前が好きだった…
これからも柳瀬の隣で笑っててくれよ…」

『…蛭川さ…』



ほんの少しの間、コイツの心の中を柳瀬じゃなく俺が占めていた…
それで…充分…だし



「ほら、仲直りしてこい…素直に自分の思ってる事言えばアイツだってわかってくれる
柳瀬だってお前の事好きなんだし…」



柄にもない事言う自分がすっげーサムイ…
でも、コイツにだけ…









昔から俺の憧れは柳瀬で…
俺が好きになった女の視線の先にあったものは俺と同じものを追っていた…
まだ忘れるには時間がかかる
ミッションをこなしていくうちに仲間へと変化していくかな
どんだけ想っても…
お前は…柳瀬のもの…







-end-
2012.06.17
title: 確かに恋だった様


うぐぐ><
切ないたっくんが好きなんです
最愛は宙ですが、柳瀬√の報われない立ち位置にいるたっくんが好きです
すません
こんなヤツなんです…


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