CAPTAIN | ナノ





手を伸ばす、その先に




活動停止状態だったバスケ部を復活させたマネージャー

今は、全国常連校になった後輩たちの中で伝説化している


『矢島さん!』



名前を呼ばれて彼女に右手を挙げる






紅一点バスケ部のマドンナ的存在だった彼女は
今は俺の隣にいる

今でも不思議でならない…

彼女は、どうして俺を選んだのか

どう考えてもアキラや佐伯の方が仲が良かったように思ったが…

彼女に恋をしていた奴は少なくない

俺も…その一人だった






『お待たせしちゃって…』



はぁはぁと息を弾ませ、肩を上下に揺らす



「そんなに慌てなくても俺は逃げないよ」

『へへ…そうですね♪でも、早く会いたかったし… 』



あぁ…もう!

どうして君は…



「行こう…」

『はい!』



差し出した手を握る彼女…

そんな行動も当たり前になっている

何年たってもあの頃と変わらない輝きを放ち
尚も俺は君から目を離せないでいる









『わぁ!素敵!』



彼女の目を奪ったのはショーウィンドウを飾っている服や靴、そして…バッグ



「入る?」



彼女にそう聞いても返ってくる言葉は



『ううん…入ったら、きっと矢島さんは買ってくれるって言うから、入りません』



毎回、彼女はウィンドウショッピングを楽しむだけ

男って好きな子に強請られたりするのを実は喜んでたりしてる

俺はその気分を味わえないでいた

だけど、今日だけは俺のプレゼントを受け取ってほしい



「悪いけど、俺の買い物にはちゃんと付き合ってよ」

『はい♪お母様のお誕生日プレゼントですよね!』

「あぁ」



悪いね…

こんな口実でもなければ君は店にすら一緒に入ってくれないし

わかるよ、君の言いたい事…

俺に何かを買ってほしくて一緒にいるんじゃないって

黙って抗議しているんだって…



『…矢島さん…?』



変な顔をしていたのかも…

彼女に顔を覗き込まれて、少しうろたえてしまった

気づかれないように深呼吸する



















『喜んでいただけるかな…』



買い物を終えて母にプレゼントを渡すという口実で彼女をつれて帰ってきた

母を待つリビングのソファーで少し不安げな表情の彼女の横顔にドキリとする

右手をギュッと握りしめて、大丈夫と言うと安堵の表情を向けニコッと微笑みため息に
も似た深呼吸を一つ零した



「また…、無防備にそんな顔を…」

『え?』



ここが自分の家だからだろうか

抑えている理性が吹っ飛びそうになる

そっと彼女から視線を反らし、ポケットの中のモノを確認する

俺は、俺意外に彼女を見る奴に誇示したいだけなのかもしれない…

キミは俺のものだって…

そんな男なんだよ…キミが選んだ『矢島賢』という男は…

大きな視野を持って世界を見ないといけない立場の俺が

キミに関しては心が狭くそれを悟られないように振舞っているなんて



『矢島さん…?』



知られたくないんだ…

でもね…



「俺の手がいつも届くとこに居て欲しい…」

『え?…あの…えっと…いますよ?私は貴方のとなりに…』



俺を見つめる瞳が揺れて、頬がピンクに染まる彼女…



「…美花…」



彼女の名前をつぶやいた時…

自分の心の声が漏れていたのだと悟った



『…今の…プロポーズ…ですか?』

「えっ!…と、あの…うん…」



誤魔化す事もできないまま、頷いてしまった


あああ…

かっこ悪い…



『矢島さん…嬉しいで…す…』



真っ赤になった彼女が俯いて応えてくれる



『私で…いいんですか?』

「キミじゃなきゃ…ダメだ…」



ポケットの中のモノを取り出し、彼女の左手の薬指にはめる



「これを俺から贈る事に…拒否は許さない…」

『…はい…』



大粒の涙を零しながら俺からのプレゼントを初めて受け取ってくれた

部屋の外で母が中に入れなくなっていることにも気がつかずに…

だけど

心から喜んで祝福してくれたのも母だった






「もっとちゃんとしたプロポーズをしたかったんだけど…」



その言葉を聞くと



『…十分です…この指輪に矢島さんの想いが詰まってますから…』



そう笑顔で応える美花…

そして…



『矢島さんを堂々と私のだって胸張って言えます♪』

「え?」

『女の子はみんな、矢島さんを見てる気がして…』



彼女の言葉に驚く

キミも俺と同じ事思っていたんだ…



「もっと言いふらして…俺はキミのモノだって…どれだけでもキミに縛られるから…」



おデコとおデコをくっつけてお互いにフフッと笑いあう



「幸せになれるよな…俺たち…」

『はい♪』

「愛してるよ…これからもずっと…」

『私も…賢…』



初めて名前を呼ばれ、ドキリと心臓が震える











美花と家族になる

俺たちは幸せになる

手を伸ばしたその先は明るい未来しかない

そう確信する









-end-

2011.10.02

title:星空ロマンチカ 様




かなり遅くなりましたが
Daybreak 華帆様に捧げます

HAPPY BIRTHDAY♪
今年はシマケンにしましたwww
春さん、怒らないかなdkdk

素敵な一年になりますように…

華帆様のみお持ち帰り可です


幸より

prev  next




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -