何億年前の星
才能
旅の途中

何年も前のベルの面影をみる
それによって主人公は救われる、という話

マーモンとベルの演劇のような会話

「マーモンは死んでるよね」
「とっくに」

いつだって真剣だった

助けてほしかった
誰も助けてくれなかった

街中を歩く

ベルの狂気は忘れないこと
静かな狂気であること

泣くシーンからはじめる

ベルが車運転する

あなたはわたしの、…。
あなたはわたしの憧れでした。

ベルの衰勢
年をとって、それからどうしていくかなんて考えたことがないし、きっと年をとったってそんなこと考えないんだろう。

年をとったベルとコーヒーショップのおねえさん
年をとったベルはただただ優しいが、時折とてつもなく酷い

青春をベルと過ごしたおねえさんが、数十年後、死ぬ間際のベルに会う
ベルは猫のように、自分にふさわしい死に場所を探して、どこかでひっそりとその生涯を終えるつもりなのだ。

ラストはベルの後ろ姿の描写

「ベルは死ぬの」
「たぶんね」
「不思議」
「人はいつか死ぬし」
「ベルは違うと思ってた」
「そうだな」
「ベルは今何歳なの」
「さあね。覚えてない」
「そう」
「…年をとるってことは」
「…」
「周りの奴らがどんどんこの世から消えてくってことだよ」
「ベルもそうなの」
「いづれわかる」
「…教えてくれないの?」
「なにを?」
「ベルが死んだこと」
「やだね。なんでお前にお知らせしなきゃなんねーの」
「けち」
「強欲」

ベルのことを考えるとクラクラする

終電間際の電車に乗って夜空を車窓から眺める
ゆっくりと駅に停車する、誰も乗らないし誰も降りない
まだわたしは何も得ていないし、何も失っていない
まだ旅の途中なのだ、と思う

「俺のこと」
「…ベルのこと?」
「俺のこと、お前だっていつか忘れる」
「そんなことない」
「別に責めてないから」
「忘れるはずない」
「被害者ヅラしてーわけじゃねーんだ。ただそれが自然だからそう思っただけで」
「ベルは不自然の具現化みたいな人なのに?」
「言ってくれんじゃん」
「とにかく、わたしはベルのこと、忘れたくても忘れられる気がしないよ」
「しし、お前がおばさんになっても同じこと言えるかどーか」

 立て付けの悪いベットサイドの大きな窓から夕日が射している。わたしがおばさんになっても、この夕日は同じ色をしているだろうか。そして、夕日を見上げるわたしも、なにひとつ変わらないでいられるのだろうか、なんて、疑問に思うそばから、変わらないわけがない、とひとつ寂しい涙がこぼれた。

「別に変わることは悪いことじゃねーよ。ぜんぜん」
「なんか今日説教くさいね、ベル」
「説教くさくなる年になったから」
「おじさん」
「まあもう否定する方がかっこ悪いような年だし」
「おじさんかあ」
「うっせ」



「暗殺者なら暗殺者らしく殉職しようと思ってたんだ。いや、まあそんときは殉職するほど弱くなるなんて想像もできなかったけどな」
「若気の至りだ」
「若い奴にそれ言われんのが一番ムカつく」
「あっそ」
「…で、いざ急にいろんな能力が落ち始めた瞬間に、怖いって感情が出てきたわけ」
「人類最強の暗殺部隊なのに?」
「しらねーよ最強とか。俺はヴァリアーに入った瞬間から天才天才って言われ続けて、ただやりたいように殺してりゃよかった。ボスが帰ってきたときに俺はまだ16だったし、これからやりたい放題できる年だったからさ」
「…ボスは今どうしてるの」
「とっくに死んだよ。でもどこでどうやって死んだのかは幹部の俺らも知らない。つーかその幹部共も、今生きてるのか死んでるのかもわかんねーし」
「そう」
「他の幹部の奴らはきっと、そういう怖いって感情に立ち向かえるだけの心理的な地盤があったんじゃねーかって思ってて」
「あーベルそういうのなさそう」
「殺すぞ」
「できないくせに」
「しないだけ」
「…」
「俺は自分の限界とか、越えられない壁とか、どうしようもない行き詰まりとか、そんなもん今まで一ミリも見あたんなくて」
「うん」
「で、行きつくとこまでいっちゃって、そこで突然行き詰まった」
「一番やばいやつじゃんそれ」
「お前にもいつか来るよ」
「そんな気はしてる」
「…そしたらもう見えた道に飛びこむしかねーじゃん?」
「そうなの?」
「そういうもんだよ」
「そうなのか」
「で、飛び込んだ道がここに続いてたってこと」
「馴染みの喫茶店の若いおねーちゃんをナンパして家に連れ込んでこうやってしみじみ話すここに?」
「言い方ってもんがあんだろクソガキ」
「クソガキで結構」
「…」
「ずっとここに居られるなら、クソガキでもなんでもいいよ」

 ベルは静かに椅子から立ち上がり、だらだらと歩いてカーテンを閉めた。もとから暗いこの部屋の密度がぐんと増す。さらさらとした金髪がアンティーク家具のようにふんわりと淡い光を反射して、ベルをこの部屋の一部のように溶け込ませた。スリッパの音が二歩したあと、大きな手が頭に乗せられる。

「さ、今日はもう帰んな。お嬢ちゃん」

 ベルの手はほんの少し名残惜しそうに、私の髪をわずかに撫でた。
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