小さい頃は、高校生ってもう大人なのかと思ってた。




「あ」

ミルキーとチョコレート、それに紙パックの紅茶。バーコードを的確にピッピッと読み取っていった敏腕アルバイターな彼はベルフェゴールという名札を付けていた。対してさほど贔屓でもないこのコンビニでお客をやっている私は部活帰りだった。大会直前で練習も最終下校ぎりぎりまであるから、今なんて何故コンビニなんて寄ってしまったんだと浪費した時間たちを悔やんだくらいだった。疲れきった顔は果たして彼の目にどう映るのだろうか。

「ベルじゃん」
「…おー」

小さく返事をしたベルは、仕事中だからきっと長話なんて出来ないんだろう。私はさっさとただの客に戻り、レシートまで丁寧に受けとってコンビニを出た。

こんなとこでバイトしてんだ。
そう思いながら本心は一刻も早く此処から離れたいと思っていた。なんだか辛かった。頭の奥がぼうっとして、暗い色の煙に包まれているみたいだった。
高校に入ってからは、ずっと部活ばかりして過ごしてきた。バイトなんて時間もないし、夢のまた夢、というか思考外の話だったのだ。比べて中学のとき同じクラスだったベルは、たしか高校は帰宅部にするとか言っていた。バイトをして夢のために貯金をするのだとか何とか。そのとき私は馬鹿じゃないかと彼をさんざ笑ったが、今考えてみれば笑われるのは私のほうなんじゃないか。煙の正体はきっとこれだ。

高校生になったらもう大人であるような気がしていた。それは体格や雰囲気とかでなくて、私の場合、社会に組み込まれた人間が増えることを指す。小さい頃、アルバイトの高校生は全員、そのコンビニの正社員だと思っていた。他の店も然り。そして当然、私だってそうなるに違いないと信じて疑わなかったのだ。

私はなんだか15歳のまま止まってしまっているような気がした。私は肩に掛かる荷物の重みを夢みたいにぼんやりした心地で感じながら、ああ大会は明後日だ、と大会当日の自分を思い浮かべてみる。ああ、ちっちぇー。喉を流れる敗北感。