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任務先でマフィアを殺すたび彼の顔が浮かぶ。
彼は生きているのだろうか。もしかしたらこの扉の先にいるのかもしれない、きっとそうだ。何故か確信して扉を開けても先にあるのはぽっかり空いた空間と名の知れぬ人間だけ。落胆を力に変えて任務を終了させるけれど、いつも満たされない心だけが私の中心をさまよっていた。



「先輩ってもしかして3年も彼氏追っかけてるんですかー?」

「そうだよ」

「なるほどミー達と話したがらないのもそれですね」

「そうだよ」

「…もっと別の言葉喋ってくださーい。暇なんです」

「…」



最近入ってきていきなり幹部になった霧の少年。名前は忘れた。興味ないから。
だけどその妙に耳に残る口調で私は彼を記憶していた。ぼーっとしてそうだけど棘のある物言いの。しかし私にだけはあまり深く突っ込んでこないようで、私が面白みのない人間だと分かると彼はすぐ黙って階段を降りていった。



「ベルセンパイが言ってましたよ」



螺旋階段の下から彼が私を見上げていた。重たそうな蛙頭を右手で支えながら私を見つめるその姿はなかなか可愛くて、初めて彼の目を見た。綺麗なグリーンの瞳。



「答えはすぐそこにあるのになーって」

「…っ」

それは単純に諦めろって事でしょう?そんなこと出来ないししない。絶対にしない。苛々を鎮めようと目を閉じた。

「先輩、限界なんじゃないですか?」

「なんで、そんな、こと」

「だってもう先輩…」



片腕も片目も失ってるんですよ。


近くなった声に目を開ければ、すぐ傍まで来た新米の彼が私の右手をとった。左腕は随分前から、肘の上までなくなっている。
はっとして瞬きをする。そこでやっと私は自分が泣いていたことに気がついた。