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…鳥肌がたつほど嫌な仕事は彼の為だと思わなければとっくに辞めている。意志の弱い人間だと言われれば仕方ないが私には私の考えがあるしましてや目の前の金髪男の話す例えばグダクダと何か説教みたいなもの、を聞いてやる筋合いなんてこれっぽっちも存在していないのだ。

左ハンドルの外車を操るベルは、今私が心の中で舌打ちをしたことに気づいただろうか。街路樹の葉が雨に打たれて音を立てる。それら全てが舌打ちに聞こえて顔をしかめた。分かってる。全部私のせいだ。



「いつか理由が変わると思ってたから黙ってたけどさ、マジでその男ここに居ないから」

「…絶対いるよ」

「なんで」

「…」



だって割引券の裏にVARIAって書いてあったから。私の大好きなカフェの割引券に。

ちっせぇ理由、って笑うでしょう。だから私はあなたが大嫌い。


「…」


だから途端ベルが黙り込んだことに私はどこか落ち着かない。だけど任務が終わるまで、ベルは一度として口を開かなかった。