「死んじゃったよ」「ああそうだね死んでしまったね」「僕のナギサ」「俺のナギサ」「とても忠実なニンゲンだったのに」「もったいないことをした」「かわいそうなことをした」「かわいそうなのは僕だ」「かわいそうなのは誰だ」「だれもかわいそうなんかじゃないだろう」

「僕がほしかったのは何なんだろう」「愛なのか」「世界なのか」「どちらもではないのかい」「いいや、僕は世界がほしかったんだ」「じゃあ何故もっと利用しなかったんだ」「彼女が死ぬことはわかっていただろう」「何でわざわざ君が俺に聞くんだよ、お前だって分かってただろ!」「分かってた」「だけど僕が欲しかったのは愛だ」「君を失って始めて気づいたんだ」

「俺はナギサを愛してたよ」





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世界という世界は粉々に砕かれ引きちぎられ、私の中のアイデンティティはもはや役立たずのスニーカーと同じだった。もう何処へも踏み出せない。続きの一歩はもう何処かへ行ってしまったのだ。彼を銃殺した。罪悪感はなくただ悲哀の海に放り出されただけだった。私は悲劇のヒロインか。そんなはずないだろう。だけどすべて遅すぎたのだ。ぎりぎりの選択肢は0か1。何を掛けたってこれ以上増えることは、ない。