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いつの間にか遮断された外界との扉。この部屋はきっと冷凍室だ。ザンザスだって知っているはずなのに。何故わざわざ死ににいくのだろう。
ああ、そうか、



「知っているだろう。そのナギサはパラレルワールド内ですら生き残りが居ないんだ。つまり」



最後の私だからだ。


さらに加速する温度の低下に息を白くしながらも息をした。静かに、別人である私の終焉を見つめたいと願いながら自分がその別人であると気づくのはすぐ後。終焉の終焉。私が居なくなればパラレルワールドを移動する人間がいなくなる。つまり、消える。



「まず、君には死なれたら困るんだよね。ナギサ」



彼が、口角だけを吊り上げた奇妙な笑い顔を浮かべる。ザンザスの体温が下がっていく。静かに振り返る。皆がいた。結局皆それぞれの世界で私を愛していたし、私は皆をそれぞれの世界で愛していたのだ。



「俺のナギサはもうずっと前に死んだ」



まるで別のところから音声のみが発せられているような非現実感。口の動きだけがスローモーションのように網膜にこびりつく。けれど私はその私ではない。


幹部が皆寒さに意識を失ってから、私は自分の役割について全うすることを決意した。いつ決意したって遅かった。

ならぎりぎりまで。