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考えが及ぶ前に条件反射で扉を開いていた。ザンザスが私の頭を掴んでこめかみに銃を突きつける。怖くはない、目の前にはあの彼が居たのだから。



「分かってただろ」

「ふふ、そうだろうね。俺はこいつが死んだって構わないし。でもこいつが死んだら、」


彼は私をすっと指差して薄く微笑んだ。私は息をのむ。言葉の意味が分からなかった。


「こいつが死んだら、俺だって抹殺されるんだろ?それだけはご免かな」

「…っ!」



彼は拘束された両腕を下ろしたまま嫌らしげに笑った。「ナギサ、君の世界で俺は会社員をやっているらしいね。俺にしてはありきたりな職を選んだものだよ」嘲るような視線。何か言おうとして口を開いたが、非難も暴言も、悲しみも困惑も、何一つ言葉にならなかった。



「それくらい君が大切だったんだろうね。しょうがなかったんだ。無意識でパラレルワールドに行ける人間なんて君くらいしか居なかったろう?」