(なんだか幻だったんじゃないかなって、時々、思うんだ。…君がいたことも、君を愛していたことも。なんていうのは、ついに君の死体が変な動きもせずに、まるで何もなかったように土に還っていったからだ。変な話だけれど、一晩で消えたんだ。毛髪も、骨も、脳みそも爪もなにもかも。もう一度振り返る。何一つない。)




「さようなら」




(今思えば、おかしな話だったんだ。会社から帰ってきたらいつも犬みたいに駆け寄って来る君が居なくて、必死で探しまわったら明け方、ベットの下で死んでたのを見つけたんだっけ。…俺の許可もなく。なあ、君は俺のものだった、あの時までずっと、忠実なモノだったのにな。)