ほんとうに留学生なんですってば、と彼女は身振り手振りで話し出す。談話室に入ってから、女の表情は先程と寸分の一致もなく「ただの女子大生」に変わっていた。
いや、戻っていたのかもしれないが。


「だってほら!資料見てください!私は交換留学生で、…ってお兄さん!きいてくださいよお!」

「お兄さんって誰だぁ」

「そこの金髪のひとです!名前聞いても教えてくれなくて」


どうやらベルのことらしい。するとベルは今にもナイフを取り出しかねないような、はたまた小馬鹿にするような顔つきでふりかえった。女を指さし口を開く。

「花子」

ニホンの女っつったら花子だろ?とあからさまに馬鹿にするような笑いに、女は全力で否定の言葉を返した。


「違いますよ!…ただマ、マフィアの方々に本名言ったら終わりじゃないですか」

「ここに来てる時点でアウトじゃね?…まぁいいや、俺こいつ気に入った。置いとこうぜスクアーロ」


ああ、と一言呟いてから気づく。ベルは初めから、女(今は花子と言っておく)がここに長期滞在することを分かってたんじゃねえか。だから自分は名乗らないながらも俺のことはスクアーロ、と呼んでいた。

身内ながら気が抜けない野郎だぜぇ、とスクアーロは立ち上がり花子とベルを眺めていた。さて、ザンザスには何と言えばいいものか。