「しかも私そっちの世界の人じゃ、ないから。ただのがく、学生だし」

…びびってんのかこいつ。
女はズボンの裾の埃をしきりに払いながら、バッと音がするくらい勢いよくこちらを向いた。微妙に怯んだ。

「えっとじゃあまず自己紹介する!します!ニホンから来ました留学生で名前は、」

「う゛ぉぉい!マフィアに向かって本名名乗る馬鹿がいるかぁ!」

「……。ミスりました」

「本当にお前マフィアじゃねえみてぇだな」

みたい、じゃなくて本当に留学生なんです!と大声で主張する女。とりあえずここに放置するのも後味悪いしなぁ。
視線を泳がせて思案すること3秒。よし決めた、腕は悪くねぇ。雲の守護者も10年欠番じゃあ流石に最近困ってきていた。

「よし。ちょっとお前ついて来い」

「えぇぇ!軟禁とかですか!むっちゃお断りですそれ関係はっ!」

「…ここに突っ立ってりゃそうなるかもなぁ」

「行きます!ついて行きます!」

謎の留学生(仮)は脅すと簡単について来た。完全に馬鹿だ。日本の奴らは沢田といい野球小僧といい、馬鹿の集まりなのか。絶対そうだ、疑いが確証に変わった。