「捜すっていったって、どうするんですか先輩」

「聞き込み」

「…ふざけないでくださいよそんなローカルな手法…」

「嘘嘘。今日で潜入は終了だし、片っ端から任務見て回ればいんじゃね?」

「やっぱりローカルぅぅぅ!」

「ちなみにABC班お前な。オレD班みっから」

「格差社会…!」

「あったりまえー」



しかもD班ってわたしたちと合同で訓練してた班じゃないか。つまり目の前の班だ。ふうとため息をつくまえにベル(先輩)はD班と合流して、北地点に向かう。…なんだあいつめっちゃD班と仲いいぞ!なんでだ!心の舌をチッと鳴らすと、なぜだかフラン隊長の顔が浮かんだ。



「呼びましたかー」

「呼んでませんよー…」

「紛らわしいんでー、ってかウザいんでやめてもらっていいですかね」

「すいませんごめんなさいまじ調子乗りましたハイ」

「そんな謝んなよー」



浮かんだのではなく存在していた。しかもわたしの目の前に。ていうか空から降ってきた。小雨ばりにナチュラルに降ってきた、サァって。…
ってなんでこんなとこ詳しく解説してんだわたし。ともかくスパイ調査だ。見つからないのは分かってるが100も承知だが調査だ。…ん、フラン隊長ついて来るんですか。
それにしてもカエルウザいですねー。その頭で頭突きしたら殺人できるんじゃないですか?暗殺じゃないですけど。ゴンって音しますけどね、全然スマートじゃないですしね…ってほんと、今日どうしたのかな疲れてんのかなわた、…し





*





あ、また眠らされちった!フラン隊長また失言してわたしのこと眠らせやがって!…ん、待てよ、失言したか?してなくないか、どうしたわたしの脳みそ。働けえい!………………


おっとぉ?






「ぎゃあああああ」

「びっくりマークつけてくださいよー、文章化したらただの棒読みですよ」



こいつ、フランじゃない。スパイだ。つまりこいつはA班でもB班でもC班でもなくD班。…ベル、図ったな…。



「え、ちょっとちょっと待てよきみ」

「なにをどう待つんだよー」

「全体的に」

「こうもっと具体性のある発言してくれませんかー」

「あ、じゃあまず第一にあれだ。カエルをとんとんしてくれ」

「はあ?」

「ベル呼ぶから」

「…」



わたしのKYレベルはきみの頭脳を越えていた!あ、KYって時代遅れなのかい?つまりスパイくんは戦意喪失したみたいだった。携えたライフルもぶらぶらと下を向いた。
いやちがう。逆に逆撫でしたみたいだ。刹那、銃声が響き渡る。



「あなたが自首するまで」


スパイくんはクフフと笑った。


「新米が一人また一人と、死んでゆきますよ」



太い枝の上から地上を見下ろせば、寸分違わず脳天を撃ち抜かれたひとりの男。新米は一人また一人と殺される。これは宣戦布告である。風に無理矢理流された木々がざわざわとわたしを笑う。これは宣戦布告であるのだ、決して負けてはならない。



「よしその喧嘩、買ってやろうじゃあないか」




20100718