骸さんが独自の情報網で知り得た事実はベルの予想とだいたい合っていた。


自分の立場を脅かす者を容赦なく消していくルシサスは、もちろんターゲットになるにふさわしい数々の行いをしてきた、…に違いはないのだけれど、ルシサスもまたさらなる黒幕に駒として使われていたに過ぎなかったのだ。

例のファミリーのボスは間違いなくルシサスの父親だったのだけれど、その父親、ななんと、30人以上の妻がいる。法的なアレは分からないけどとにかくめっちゃ嫁と子供がいるらしい。正直娘の顔と名前が若干一致していなかったりする。ちなみにその事実を元ボス(支配人)は知らなかったらしい。あんまり有名な話ではないみたいだ。


おそらくファミリーのボスはこの計画をまるきり知らないのではないか、というのが骸さんの予想である。
ああまあ確かに…。娘が死んでるのにぜんぜん姿見せないしね。


端的に言ってしまえば今回の黒幕はルシサスの母親である。闇市やら闇ルートやらを操っていた一族の末裔らしい。その母親が、名の知れたマフィアの名の知れたリングを流して金にしようと企んだのがすべての始まりだった。




「でもちょっとそれおかしくね?」

「なんで?」

「母親がどんなにリング欲しさに娘に好き勝手横暴に振舞わせたって、ボンゴレが殺しに来るとは限らないわけじゃん」

「うーん、まあその辺は運に任せたんじゃないかな…」

「確かにおかしな話ですね」

「そ、そうですね、やっぱおかしいですよね」

「日和見にも程があるだろ」

「それな」




元ボスが若者言葉を無理やり使って会話に入ろうとしているけどまったく受け入れられてない。




「王子天才だからわかっちゃったんだけどさ」

「自分で天才とか言っちゃうダサさよ」

「死ね」

「いたいいいたいいいたいいたいごめんなさいいたい」

「俺らに任務依頼してきたファミリーもグルなんじゃね?」

「そうですね…、ヴァリアーリングとヘルリングの価値を考えれば、そのファミリーと母親で山分けしたって余るくらいですから」

「だろ?」

「あなたの意見も一理あります。…むしろそちらの方が都合がいい」




ベルフェゴール、あなたは人を殺すのが好きですね?それも皆殺しのような大きな仕事が。

骸さんがにやりとしてそう言えば、めずらしくベルも応えるように笑んで、うん大好き、と返事した。

なんかやばいような気がする。とてつもなくやばい臭いがする。一呼吸おいて骸さんが話し始めた計画は胸が踊るけど正直関わりたくないほどギリギリの任務だった。




20160607