「ぼ、ぼぼボス」

「あ?」

「なんでですかっ」

「お前ら仲いいだろ」

「なんだその遠足の班決めみたいな発言は!…じゃなくて仲良くないでございまへぶしっ」

「初任務が王子とペアで不満とか死ねよ」



ワイン色の絨毯の上を、自称王子に殴られ、引きずられ部屋を出た。布が擦れて痛かったが何も言えない。なんで初任務がこいつとペアなんだ畜生とわたしは、少し抵抗したがあっさりと頬を叩かれまたなす術をなくした。



「いたい」

「お前が暴れっからいけねー」

「女の子を躊躇なくひっぱたく精神が理解できるかばか」

「お前女の子だったっけ」

「しぃぃぃぃねぇぇぇぇ」



任務終わったら必ず復讐してやる、ってかこいつより先に昇進してやろう絶対に。わたしのこの誓いはベルが幹部であるという時点で叶わないのだが、すばらしくそのことに気づかないわたしは、向上心めらめらで任務先へ向かったのである。


しかし、任務先で広がるありえない光景に、さすがのわたしも誓いを撤回せざるを得なくなってしまった。



「ベルくん」

「…ん」

「家系は?代々の暗殺者とか?」

「王族」

「はあ、」

「信じてないだろ」

「もち!」

「元気よく肯定すんなあほ」



Dランクとか、ウォーミングアップにもなんねーよと肩をこきこき鳴らしながらベルは去っていった。代わりにやってきたのは霧のフラン隊長だった。カエル頭が重そうな隊長はどうでしたかー、とわたしに感想を言うよう促す。ベルくんがぜんぶやっちゃったんでわたしはなんも…と言い、なに素直にぶっちゃけてんだと閉口する。



「正直者ですねーえらいえらい」

「なっじゃあ元からわたしがなんもできないって分かってたんですか!」

「っていうよりー堕、ベル先ぱ…っと、ミーはあいつのこと普通に呼べませんねー。どーしたもんかなこれ」

「…?」

「とにかくあの金髪野郎が勝手にやらかしただけなんでー、別に名前が駄目だとかそんなんじゃないですよー」

「ほい」

「ほいって何だ」



そういえば金髪野郎、今日はナイフ使ってませんねー。隊長の言葉に若干の違和感を感じたわたしは新入りがナイフなんか持ち歩くんですか、なんて聞いた。隊にはいりたての連中は大抵、小型の自動小銃しか持たされていないのだ。



「だって金髪野郎の武器はオリジナルナイフですし、ってあ」

「…あ?」

「やっちまったー。ミーやっちまったー」

「どど、どうしましたか」

「今の発言撤回ですー、ちょっと寝てもらいますねー」



堕王子が暇だ暇だうるせーから、いけないんだばかやろー。最後に聞こえた隊長の独り言も、目が覚めた頃には綺麗さっぱり忘れちゃっていたのでした。



「カエルどじ踏んでんじゃねえよ」

「堕王子が変な遊び始めたからいけないんですー」

「ちなみにオレ、あいつ狙ってっから」

「趣味わる、ゲロゲロー」

「お前も好きなくせに」

「…このやろー、言い返せないい」





20100508