「ルシサスが死んだって僕は責任問われないと思うよ」とか言いながら結局隊長をかばって死んでしまった元ボス。フラン隊長のほうが300倍くらい強いんだからめっちゃ無駄死にじゃんって思ってたけど、今の状況を見るにぜんぜん無駄ではなかったみたいだ。



「あーあーあーあー……」



わざとらしく呆れた声を出して、ベルは両手を頭の上に乗せた。あちゃー、みたいな顔をして私を振り返る。なんだなんだ、わたしになんとかしろっていうのか?




「言っときますけど無理ですからね」

「お前さあ、こういう時だけ敬語使うのやめろよ」

「だってベルは幹部だから」

「あのカエルと任務組んでたのはお前だろ」

「それはそうだけど」




人人人人人人人人人人人!!!!!!!

もれなく全員オタク。明らかに挙動不審な男共(ちょっと女もいる)が怪しげな双眼鏡やらスコープカメラを持って隊長のアジトの周りを囲っている。その光景は戦場そのもの………いやちょっと言いすぎたけどかなりやばい空気なのは確かだ。

ジャッポーネの警察はなにをやってるんだ。ここまで異様な光景なら誰かが通報してもおかしくないだろう。そう言うとベルは頭に置いた両手を下ろして、車の窓ガラスにもたれながら笑う。




「ルシサスのファミリーから圧力かけられてんだろ、ここだけファミリーの治外法権ってことじゃね?しし」

「ルシサス殺しの犯人を精神的にも追い詰める作戦ってことか…」

「ていうより、カエル殺しの罪をこのオタク共になすりつけようとしてんじゃね?」




もう死んだみたいな言い方やめてよ!と抗議するもベルは楽しそうにうししと笑って肩を揺らすばかり。


ベルの予想はこうだ。

隊長は無事ルシサスを殺して任務を完了させた。その後アイドルになってしまったわけだが、今までルシサスに殺されたアイドルたちのファンは隊長を「敵討ちをしてくれた神」と崇めたて、その逆にルシサスのファンは「1位を独り占めするために手段を選ばない人殺し」と殺意を抱く。

ファン同士で争いが起きる中、隊長はルシサスのファミリーを撒きながらアイドル活動を続けていた。1位として今後もアイドル活動を続けるというのは、支配人との約束であったから(まあ私のテキトーな口約束なんだけど)。

そして、隊長を崇める者も殺意を抱く者も、隊長のおはようからおやすみまでをしつこく監視するようになった。どっちにしろ迷惑な話だ。そこで隊長がファミリーを撒くシーンを誰かが目撃してしまったのではないか、というのがベルの「カエル身バレ説」だ。




「それならあいつらがカメラ持ったりしてるのも納得いくじゃん」

「でも家を見張ってたって隊長がマフィア撒いてるシーンは激写できないよ」

「はじめに目撃したやつが『家の前で見た!』とか言ったんじゃねえの」

「てかそもそもアジトバレてんのがやばいよね」

「やばいね」




包囲されたマンション……じゃなくてアジトを遠目に見ながら切れてしまった隊長からの電話をもう一度掛け直す。1コール聞き終わらないうちに声が聞こえてきた。早。




「今どこですか」

「アジトから300mくらい離れたところで包囲網を眺めてます」

「バカ、助けてくださいよ」

「なんか隊長、すっかり女の子っぽくなりましたね」

「女の子だったらよかったんですけど」

「えっ、……………えっ!?」




隊長女体化キタコレ。




20160606