玄関にいた数名のメイドにヴァリアーだと伝えると、彼女たちはそそくさと別の部屋へと移動を始めた。最後に残ってしまった(かわいそうな)メイドを先頭に9代目の謁見室へむかう。チリひとつない豪邸。いくつものシャンデリアがお互いに反射しあって雫のように光っている。綺麗だなあ、と内心思いつつ口をついて出るのは育ちの悪そうな女の子のそれ。



「うっわなんだこれ歩いても足音しないとかなんだこの絨毯っ!毛足長くね?」

「結局何が言いたいんですかー。意味わかんねー」

「毛足長くね?ってやつっすかね」



任務の前に言葉の練習した方が良んじゃねーの?とさんざ叩かれながら螺旋階段を上る。いやあ、なんでこういう豪邸は広いくせに省スペースな螺旋階段が好きなんだろう。ぐるんぐるんと先へ進む。にしてもなっげえなあ。螺旋階段の刑とかに処されてるみたいだよ。ちなみに螺旋階段の刑って何だよとか言っちゃだめです。メイドがこちらを振り返って怪訝そうな顔を一瞬、した。



「うわっちょっとまて酔った」

「いつ」

「今」

「名前酔ったなう」

「…呟かないでいいから」



ふと立ち止まって階段の隙間から下を覗く。この高さからあのぽよんぽよん跳ねるスーパーボールとか落としたらすごい跳ねるよきっと。小さいころに、跳ねたスーパーボールが額に当たって痛い思いをしたことがあるのを思い出して、思わず額をさすった。



「こちらです。間もなく9代目様もいらっしゃると思いますので、私はこれで失礼いたします。どうぞごゆっくり」

「ごくろー」



ベルが適当に返事をするとメイドは踵を返し去っていった。久しぶりに女の子見たからテンション上がってたのに残念。
あのメイド相当かしこまってたけれど、きっと更衣室とかで今日のわたしたちのこと話すんだよきっと!ヴァリアーの女が螺旋階段で酔ったって!



「さーて、名前ちゃん。心の準備はいい?」

「あ、えーとえーと」

「準備する心もねぇだろぉ。いい、入れろお」



入れろ?



「ちょ、えぇぇえぇおまえら卑怯だろまてまてまてまてまてま」



バタン。



何が起きたかはご想像にお任せしますと言いたいところだけれど超絶助けが欲しいので報告します。謁見室にひとりだけ入れられました。

目の前に9代目なう。




20101209