腐女子をけちょんけちょんにしたがる女の話です。閲覧注意









「てゆうかさ。…こいつらも私と同じ人類だっつうのがほんと信じらんないよほんとに。こんなことして上達するのはタイピングだけなんじゃないの?あと何?画力のこととかはわかんないけどさぁ、…馬鹿じゃないの?何よこんな動画サイトなんて、…」



タイピングだってそうそう上手くはなんないんじゃね。俺はパソコンに向かってぐちぐち、文句を垂れる女の横で立ち止まった。どっちかってーと画面の向こうで無数に流れる文字の数々より、じめっとしたこの薄暗い部屋であらぬ表情をしたこいつの方が気味悪い。途端、彼女は机に突っ伏し小さく呻いた。揺れる黒髪、いつだってそうだ。

――知ってるぜ。お前目立ちたがりだし、だからこそ自分が女だったこと呪ってんだろそうだろ。


「ねえ。なんで私こんなに頑張ってるのに1ミリだって載らないの?ねえ?少年漫画だから?可愛くないから?女は必要ないってか?世の中みんな腐女子か?」
「お前なにげに俺らにも失礼じゃね」
「知らないよ!載ってる人は私の気持ちなんかわかんないでしょ!もう。なんでヴァリアーこんな人気出たかな…シモンみたいに女キャラ出してもいいとか思ってくんないのかな。いい加減待つの嫌」
「お前Bじゃん」
「はあ?」
「胸」
「そりゃこんな仕事してりゃ動いて減るわ、アーデルハイトが異常なの」
「あっそ」

そう。こいつは十数年間ずっと漫画に載ることを夢見てる、雲の守護者だ。モスカが消えてからすぐ、こいつは守護者に抜擢されずっとその地位は変わってない。腕だって確かだしそれはボスが一番信用してる理由でもある。

そんな女の怒りの原因は、最近マーモンが見つけた、新しいパラレルワールドだった。そこには俺らが漫画のキャラとして存在してるっぽい。ヴァリアーは最強の暗殺部隊。間違っちゃいない。
だけどいつまで経っても女、雲の守護者は欠番設定になっていたり謎の蛙頭フランがマーモンに代わって霧の守護者をやったりと、多少違いはある。まあ、向こうの世界の都合だ。俺が思うに、お前が漫画に出れない理由は胸にあると思うのだが。



この漫画はどうやら少年漫画のくせして女子中高生に人気らしくアニメをいじくったような動画も沢山あるらしい。例の動画だって場所を選ばず蔓延しているようだ。んで冒頭の発言に戻る。

「私さ、この回らへんでずっとスクアーロの補佐してたよね?そんでこの時はレヴィと合同で動いてたしベルの援助も行ったし。はぁ。なんで?」

女はくるくると巻いた髪の毛を揺らして嘆く。ま、俺は向こうの世界でも人気だからぜんっぜん、いいんだけど。なんて言ったら殺されそー。
けどな、これみよがしにそのサイト開くな。やめろって殺すぞ。

「へへっうける。ベルフラベルだってベル2人もいっぞ。あ、リバってことかそうか。にしてもこのベル腰細っ」
「俺彼女とかいねーけど彼氏とかマジムリだから死ね」
「じゃあこの人達にいってくださーい。あは、ベルフラベルー」

クソ。チッと舌打ちをしたら女はしたり顔でニヤっと笑った。だからテメェは漫画載らねーんだよゴミ野郎。殴ったら殴り返された。この世界は漫画みたいに上手くはいかねー。やったりやられたりの繰り返し。




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