「うるさい、黙れ、死ね。」

僕は思わず目を丸くした。
こんな卑猥なサインをされたのは初めてだったからだ。
まともな教育を受けた人間ならばこんなサインを使うことも、勿論使われることなどもないと思っていた。ましてや女性がこんなサインを使うなどというのは一種の都市伝説と思っていたくらいなのだから。

そんな純粋無垢な僕の目の前で、ナマエは顔を不機嫌に歪めながら僕を「死ね」などと罵倒し、その卑猥なハンドサインをしている。
僕はそのそそり立つ中指を思わず凝視していた。

「そ、それは何のつもりだ。」
「さっきも言ったように死ねって意味だよ、ファ●ク、あんたの大事なピ━━をピ━━するって意味。お分かり?」

彼女はそう言いながらずいっと僕に詰め寄り、中指を僕の鼻に押し当てる。(彼女のこの行動は全くもって意味が分からない。)
そもそも彼女は何故こんなに僕に対して怒っているのだろうか。それすら検討つかずだった。

「き、君は仮にも女性なのだろう、そんなこと…」
「女性だから何よ?」

彼女がそう言った時に突然「ナマエ!」と言う声が聞こえ、声のした方に振り向くとナルシッサが数メートル先に立っていた。ナルシッサはナマエと僕を交互に見ながら驚いた顔をしている。それからさりげなくナマエに顔を向ければ、彼女はまるで何事もなかったかのような素振りをしていた。先程までそそり立っていた中指も今や彼女の背中に組まれた指の中に大人しくしまわれており、僕を睨み付けていた顔は恐ろしいほどの満面の笑顔に切り替わっている。

「どうしたのシシー?」
「どうしたのじゃないわ!ナマエが何処にもいないから探していたのよ、全く…。それにしてもあなた達がお喋りしてるなんて珍しいわね。」
「そうかな?私達前から仲良しだったと思うけど?」

「ね?」と有無を言わせないような笑顔でそう問われ、思わず「ああ…」と頷いてしまった。ナルシッサは「そうだったの?知らなかったわ」とまた驚いた顔をした。

「シシー、もう行こうよ。」
「行こうって、私があなたを探してたのよ?本当にもう…」
「はいはい。」

そう言いながらナマエはナルシッサの腕を組む。その姿を見てなんとなくピンときた。なるほど、彼女が僕にあんな態度をする理由はそういうわけか。一人で納得した時不意にナマエが振り向き、ナルシッサに見えないように僕に中指を立てた。



ファックサイン

そんな彼女にゾクゾクしただなんて死んでも言わないだろう。



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