「…ロン?」

ほとんどの人が寝静まり、今や暖炉の薪が爆ぜる音だけが響き渡る談話室の片隅でロンが机に向かって何やらせっせと書き物をしていた。ずっと談話室に姿が見えないとは思っていたが、こちらに振り向いたロンに近付き暖炉の僅かな灯りに照らされた彼の姿を見た途端、彼が今まで何をしていたのかなんとなく気が付いた。
彼は驚くほどに土まみれだ。

「ナマエ!寝てなかったんだ。」
「…まぁね。ロンの方こそ、こんな時間に一体何をしてたの?」
「いや…それは…」

そう呟いたロンの耳が僅かに赤くなった。私は彼の手に握られている羽ペンに目を移し、それからテーブルに置かれた羊皮紙に目を移した。テーブルの上は無造作に物が散乱し(ロンがスペースを作るために押し広げたのだろう)、ハーマイオニーの作った不恰好な編み物は無残にも下に散らばっている。(これもロンがやったに違いない。)私はハーマイオニーの可哀想な編み物を拾い上げると、埃を払い、机の上に戻した。

「ところでさっきから何を書いてるの?」

そう言いながら羊皮紙を脇から除き込めば、何やらミミズのような生き物の下手くそな絵が真ん中にでかでかと描かれてあった。そしてこれまたなんとも下手くそな字で周りにこの絵の説明らしきものが書き込まれている。

「ボウトラックルだよ。魔法生物飼育学で宿題に出た…」
「ああ、ボウトラックルね。私はてっきり…」

そこで私は素直に「ミミズかと思った」と言うか迷い、言葉に詰まってしまった。しかしロンはそのことに気が付き、顔をしかめた。

「てっきりなんだよ?」
「なんでもない。」
「絵が下手で悪かったな。」

椅子に深く沈み込み、不機嫌な顔でそう言ったロンに「ごめん」と謝りながら近くの椅子に私も腰を下ろす。暫く暖炉の火を見つめながら沈黙が続くなか、私は静かに口を開いた。

「もしかしてキーパーのオーディションを受けるの?」

突然のことにロンは目を見開き椅子からずり落ちそうになった。
顔が真っ赤になり、どこからが彼の髪の毛でどこからが彼の額なのか検討もつかないほどだ。

「どうして知ってるの?」
「あなた土まみれですよ。」

ロンは自分の体を見て、それから私を見て、パチパチとまばたきをした。まるで私を名探偵だとでも言いたげな表情である。

「…このこと誰にも、」
「もちろん言わないよ、あなたのプライベートは守りますから。」
「ありがとうナマエ!」

輝かしい笑顔を浮かべて顔を紅潮させるロンは、なんとも愛らしく私の胸を締め付けた。

「…ということは、私がロンの応援団員第一号だね!ロンが合格できるように私応援してるから。」
「…うん、頑張るよ!」


あなたの秘密を手に入れた

しかし次の日にはハリーがこの秘密を知っていて、金曜日にはほとんどの人に知れ渡っていた。
title … mutti



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