いましがた起こったことを、隣でキーキーと喚いているパンジー・パーキンソンの声も耳に届かないほど考え込んでいた。


「もしかしてミョウジってドラコのこと好きなんじゃないの?」

グリフィンドールとの口論の流れで、パンジー・パーキンソンがいつもの甲高い声で言い放った。
目の前にいるポッターやウィーズリーは「そんなまさかナマエに限って有り得ないよ」と目配せしていたが、隣に立っていたグレンジャーの顔色がさっと青く変わったのを僕が見逃すはずがなかった。
いや、まさかそんなはずはない。僕は一度だってミョウジに優しくしたことがないのだから。

「とっても迷惑よ。そうよねぇ、ドラコ?穢れた血なんかに好意を寄せられるなんてたまったもんじゃないわ!」
「ああ…僕まで汚れてしまうかもしれないからね。グレンジャー、君伝えといてくれないか?」

「残念だけどね、その必要はないみたいよ。あなたって本当に最低ね。」

そう顔を真っ赤にして言い切ったグレンジャーの後ろに俯きながら立っている人物を見て、思わず息を飲み込んだ。まさかとは思ったが、そのまさか、ナマエ・ミョウジだった。ミョウジは目に涙をいっぱいに溜めて僅かながらに震えている。ポッターとウィーズリーはこの話題の張本人、ナマエ・ミョウジの予想外の反応にアホ面を浮かべていた。

「行きましょう。相手にするだけ無駄だわ。」

グレンジャーに腕を引かれたミョウジは去り際に、キッと僕を睨み付けて行った。その顔を見て、情けなくも僕はドクリと心臓が疼いた。



「あの身の程知らずの馬鹿女、泣いてたわ。良い気味!」

隣で相変わらず喚き続けているパンジー・パーキンソンの声が何と言っているか認識できるようになった頃、やっと僕は現実に引き戻された。パンジーは暑苦しいくらいに腕を絡めてくる。僕は我慢できなくなってその腕を無理矢理振りほどいた。

「ドラコ…?どうしたの?」
「ちょっと一人になりたいんだ。邪魔しないでくれ。」

何処へ向かうともなく歩きながらも、去り際のミョウジの睨み顔が頭に浮かんでは消える。誰かを傷付けてこんなに罪悪感を感じたのは生まれて初めてだった。胃の中に鉛のようなものがずっしりと沈みこんだ感覚に陥り、ひどく不愉快だ。何故こんな気持ちになるのかと考えれば、答えは簡単である。

でも僕は気付かないふりをして、近くに落ちていた小石を力任せに蹴り飛ばしたのだった。

うそつき
title … 舌



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